飛び散るウロコ
包丁の背で、ザクザクとウロコを落としていく。気持ちいいくらいにウロコがボロボロと取れる。
ああ、なんて気持ちのいい作業なんだろうか。丸ごと魚の醍醐味は、ここにあると言っても過言ではない。
…が、一度でもウロコを落とした経験のある方なら分かっていただけるだろう。ウロコは硬い。非常に硬い。そして思いもよらない方向にビーン!と飛ぶ。
屋外で作業しているのならストレス解消にもなるだろうが、台所でなるべくウロコは飛ばしたくない。数日後、ふと壁のタイルを見たらウロコが貼りついてた、なんてイヤだ。
居間で正座しながら作業をしていた私の足も、気が付くとこんなことになっていた。
足がこの状態だということは、きっと部屋中にウロコが飛散したことだろう。でもまぁいい。後で掃除をすれば済む話だ。
今回はウロコが主役なのだ。いちいち気にしていたら先に進まない。飛び散るウロコには目もくれず、勢いに任せてザッザッとウロコを落としていく。
取ったウロコをザルに集めてみた。いつもはゴミとして即座に捨てていたので、こうして一カ所に集めてじっくり見たことなどなかったが、なかなかどうしてキレイではないか。
いやぁ、この微妙なピンク色がなんとも言えない。大変に春っぽい上品な色合いだ。ウロコ、想像以上に美しい。
自然の神秘
色に感動してる場合ではなかった。皆さん、御存知でしたか。なんとウロコには模様がありましたよ。
…すごい。初めて知った。よく「貝細工」なんてのが土産物にあるが、もしかして「ウロコ細工」も可能なのではないか? というか、すでにあるのでは? とネットで検索してみたが、該当ゼロだった。
もしかしてワタクシ、日本で初めてのウロコ細工をやろうとしてますか? …なんだか急に心細くなってきました。