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特集


ひらめきの月曜日
 
徒歩でゆく高速道路SA一泊の旅SA


自販機がずらっとならんだ入り口、そうそう、SAってこんな感じだよねえ

やたらと広範囲の名物が並んだお土産屋もいかにもだ

屋台村はしずか

フードコートも来慣れた人が多い

徒歩でSAに来るということ

私が入った入り口は、大型車の駐車場の目の前だった。大きなトラックに気をつけて、走って建物の中へ。

いつか見慣れた光景ではあるが、何を見てもいちいち「お、SA!」と思う。車でしか来たことのない場所に歩いてたどりついたからか、新鮮なのだ。なんで私ここにいるんだろうという、テレポーテーションして突然たどり着いたという感覚だ。

周りにいる人たちはみんな薄着で、雨が降っているのに傘を持っていなかった。スウェット姿の気楽な人もいる。そりゃそうだ、みんな今まで車にいたんだもんな。

そんななかで私はびしょびしょの傘を持って、ニット帽をかぶり、厚手のブルゾンを着、そのうえマフラーをぐるぐる巻きにしている。ズボンのすそもだいぶぬれている。

普通にそこにいる人たちに対して、頑張ってここへたどりついた自分は明らかに異色だった。なるほど、徒歩でSAに来るってこういうことか。

SA は祭り会場ではなかった

さて、だんだん落ち着いてくると、SAの様子がいつもと違うことに気づいた。

子供の頃、大型連休のときなどよく寄ったSAというと、フランクフルトだのポテトだのこんにゃくの田楽だのの串刺しフードや、ソフトクリームなどが売られるぎやかなイメージが強い。そう、縁日の感じだ。

今回、平日の夜にSAに来てみてそれはあくまで混雑時のはなしだということが分かった。

全体的に空いてて、一般のお客さんよりも、運転手さんのようなプロの方が多い。いきおい、お祭り的な屋台は休業、お土産屋は開いていたが、人はまばらであった。

考えてみれば当たり前の事実だが、知らない世界をかいま見たようだった。

ただ、私にとっては祭りでなくてもやっぱり楽しいSAだ。仕事で来ている方が多そうなため、おおっぴらにははしゃげず、冷静を装いながら小さくはしゃいだ。

負けずに小さくはしゃぎます。券売機は写真つきだぜ! すげー!
とん汁みそうどんて、徒歩客(わたし)向けとしか思えないメニューだ! いぇー!
大きく表示される交通情報、あまりにも今の自分には関係ない! やっほー!
とりあえず、例の小さな紙コップのタダのお茶で休憩! わーい!
   
レストイン足柄。お土産売り場の隣に入り口が

よそのSAでごろ寝ってちょっとできないだろ

部屋にあったマッチのイラストはラクダをフィーチャーでなるほどという感じ

そうだ、泊まるんだった

いやはや、そんなわけでひとりきり盛り上がりましたが、今日わたしはなんとここに泊まるのだ。

宿泊施設であるレストイン足柄はお土産売り場の隣に平然とあった。富士山の伏流水で沸かすという大浴場もあって宿泊者でなくても入れるらしく、入り口は割とにぎわっている。

入ってしまうと普通のビジネスホテルだった。外にあふれるSA感がここにはあまりない。部屋も防音がしっかりされているのか、車が通る音がしないのだ。

部屋に入ってくつろいで、最初は「おお、私いまSAでごろ寝してるんだあ!」とか「SAでテレビのザッピングしてるよ!」とか感動していたのだが、早い段階でその驚きもなくなった。

あまりに普通になりすぎて、お風呂上がりにフロントに「ビールの自販機ないですかね」と聞き、「ここは高速道路ですから……」と当たり前のことを言わせてしまったほどだ。おお、そうでしたな! 

ん? あ、そうか、忘れていたが今SAにいるということは、明日起きたらまた山道を歩いて帰らないといけないんだよな。しかも明日は送ってくれるあてもない。

……。

と、とりあえず寝ます。おやすみなさい!



 

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