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特集


フェティッシュの火曜日
 
石臼ゴリゴリ

民話や物語で石臼の出てくる場面がある。昔、教科書に 「石臼の歌」という話が載っていたし、海が塩辛くなった原因は「今も塩をまき続ける石臼が海に沈んでいるから」という内容の民話も聞いたことがある。

不思議なことに、それらの話で石臼以外の部分をまったく思い出せない。なぜ塩を出し続けるんだったっけか。

それだけ、私にはインパクトのある道具である石臼。いつか回してみたいと思っていた石臼、それをある日、お店で手軽なのを見つけたので買ってしまった。「買ってしまった」って、何か、私は「うっかり父さん」か。そんな秋の夜、ひとつ「挽き語り」でもしましょうかいのう。

乙幡 啓子

「大きいのと小さいのがあります」

以前、東急ハンズをぶらぶらしていたときに見かけたきりの「石臼」なので、在庫があるかと思い電話してみた。

「はい、大きいのが4000円ほど、小さいのが2000円ほどです。お持ち帰り?まあ、小さいのなら大丈夫でしょう」という。近く買いに行く旨を伝えて電話を切ったが、天高い秋の日、ファッションの街渋谷に「石臼」を買いに問い合わせる客ってどんなもんなんだろうと、ふと考える。


うちにやってきた、石臼。
一瞬「シリウス」かと。イシウス、かっこよさげ。

2730円。小さいほうを買ってみたが、なかなか重い。量ったら3.7kg。挽く石の直径たった11cm+台の直径17cmの石臼にこの密度。白色矮星みたいだ。違うな。

ところで、最近の若いお方に「石臼」と言っても伝わっているかどうか、心配になってきたので説明すると、読み方は「いしうす」。木の実や穀物などを2つの石の間ですりつぶす道具だ。道具だでよ。


これは使いやすいように周囲に溝が掘られ、粉受けになっている。
これは上の石の底の様子。左側の穴から手前にゆるやかな坂道があって、そこに材料が引き込まれます。

こうなってたのか!と今さら感心している。上の穴から入れた穀物などが、どうやって2つの石の間に落ちていくのか不思議だったのだ。

それに、幾何学的な溝の模様も、あとで理にかなっているのがわかる。それにしても、外見は発掘された何か、みたいなたたずまいだ。

さて、試しにいよいよ回してみようと思う。カラ回しは石が傷むので、玄米を入れて挽いてみる。


わーい。
ピンピンと、まけ出てきた玄米。
溝にたまった粉を集める。
粉、粉、こな、粒、粒、つぶ・・・

初めてだからだろうか、どうもコツがつかめず、挽ききれていない。もっといろいろ試してみて、玄人の域に一晩で近づきたい。

あと、少々音が響くようだ。ゴリゴリゴロゴロ・・・・と重厚な音が振動と共に伝わってくる。出窓のところでは近所にご迷惑なので、床にベタ置きで続けます。


 

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