ちなみにひとりにつきの平均滞在時間って、どのくらいなんですかね？
「そうですねえ……キュッと飲んで20分ほどで帰っていく人もいますが、平均すると１時間くらいですね。
でも、お店がすいていたり、その店のマスターの熱狂的なファンだったりするなら（笑）、べつに長居しても、ぜんぜんかまわないと思いますよ」
ひとつのお店に思いきってはいってみて、じゃあ他のお店を新規開拓してみよう、って思ったときは、どうしたらいいんですか?
「その店のマスターに、ほかの店を推薦してもらうといいですよ」
なるほど。……吉本さんは、ほかのゴールデン街のお店に行ったりするんですか？
「行きますよ、お知り合いも多いです」
……あのう、『ゴールデン街で店を経営』なんて、簡単にできるものなんですか？　素人としては、すごくこう……想像しにくいんですけれども。
「あのですね、『定期借家法』っていうのがあって、2000年3月に法律が変わったんですよ。
それまで長期契約しないと店舗って借りられなかったんですけれども、短いサイクルで借りられるようになったんです。つまり、資金が安くすむようになって、若い人が店を出せるようになったんです」
ああ！　数年前からたまにニュースで『今、ゴールデン街が若返ってる！』みたいな記事をよく見かけてて、ナゾに思ってたんですけど、そうか、法律か……。
「でも、ゴールデン街だけにスポットをあてられがちですけど、全国でも起こってる現象らしいですよ、古い家屋を安く借りて…っていうのは」
そうなのかー。ちなみに吉本さんて、なんでまた店をやることになったんですか？
「この『無銘喫茶』はもともとは、30年くらい続いていた『あんよ』っていう名前のお店だったんです。
僕は『あんよ』の常連で、オーナーが『店をたたむ』という話になったとき、僕ともうひとり、じょるじゅって男がいるんですが、彼と僕が立候補して、じゃあ二人で共同経営しようかー、って話になったんです」

よく見たら、前の店名が看板にのったまま……。

え、そのじょるじゅさんとは、以前からお友達……だったんですか？
「いや、常連同士ってだけで、とくに仲良くもなかったんですけど（笑）。今はいいパートナーです」
ええええ、そういうもんなんですか……お店持ったことないから、なんかこうイメージしにくいなあ。
「いやいや、そんな大変なことじゃないですよ」
いや、大変なことだと思います……。じゃあ『店をゆずりうける』方法いがいで、お店を出したい人とかは、どうしてるんですか？
「ゴールデン街の物件を扱ってる不動産屋さんが２件あるんです。そこに『どこか空いたら連絡をください』と言っておいて、借りるようですよ」

そんなお話をしてくださいながらも、サクサクッとドリンクをつくり、接客する吉本さん。当たり前だけどプロの仕種、さすがです。

そうだ、この『無銘喫茶』のこと、詳細教えてください。曜日ごとに店長さんが変わるシステムなんですよね？
「そうです。今日、僕の入ってる水曜日は、渋谷系の日（笑）」
取材しているいまも、渋谷系ファンの皆さんが集っております。皆さん、小沢健二さんの『流れ星ビバップ』を合唱しています、きゃー。みんないくつなんだろう……。
「リアル渋谷系世代と、たまにどうやって知ったのか分からないけれど、若いコがひとりで来たりしますよ。自分の周囲に渋谷系好きな人がいないんですって」
じゃあ、そういう方にとっては、このお店は救いなんですね。こういう趣味性の高い『場』って大切なのかもしれませんね……。
ちなみに無銘喫茶のほかの曜日って、どんな方がやってるんですか？
「月曜日は『博智子（ばちこ）』っていう女子２人組で、片方の方が元アイドルです」
え！　元アイドル！？
「『こんぺいとう』っていうアイドルをやってた方で……」
うわあああ知ってるううううううううう！！！！！　紹介記事作ったことあるううううううう！！！！！

↑『歌姫2001』松本亀吉先生・著（大塚がむかし編集したハードコア・ガールポップ本。『こんぺいとう』レビュー載ってます。よろしければ皆様ご一読ください）