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特集


ちしきの金曜日
 
献血のゆくえ

必要な道具一式を揃えたら、
血液型などを輸血前にもういちど確認する

輸血中は患者さんをそばで観察する

そして、いよいよ輸血をおこなう

病棟に輸血用血液がとどいて、必要な道具などの準備ができたら、患者さんの名前や血液型、つかう輸血用血液の種類や型、量などを複数の担当者であらためて確認する。

そして輸血をする直前には、患者さん自身に名前と血液型を言ってもらうことで、血液バッグや患者さんの取り違えがないことを確認するというステップを踏む。

事故を防ぐための手順が、何重にも用意されているのが分かる。

 

 

準備ができたら、いよいよ輸血をはじめる。

最初の約10分間は、1分につき1mL、それ以降は1分につき5mLの速さで点滴をおこなうらしい。想像よりもかなりゆっくりだ。

輸血中はお医者さんが患者さんのそばにいて、血圧や脈拍、顔色や吐き気の有無などを確認することになっている。

 

ところで、ぼくの献血した血小板は一般的にどういうふうに使われるんだろうか。

「血小板は、主に血液内科の患者さんに使われることが多いですね。具体的には、白血病や悪性リンパ腫、再生不良性貧血などの病気の方です」(輸血部 多田さん)

これらの病気になると、出血したときに血をとめる働きをする血小板を、からだの中でつくる力が低下してしまう。血小板の寿命は約10日なので、ひんぱんに輸血をする必要があるのだという。

ぼくの献血した分も、途中の検査で不合格になっていなければ、今ごろはもう誰かのために使われているのかもしれない。

(上の写真3点は、CD-ROM「輸血インフォメーション -2000-」より、著作者である財団法人血液製剤調査機構の許可を得て転載したものです。)

 

献血人数はこの8年で1割以上減った

日本赤十字社の調査によると、全国の献血のべ人数は、1995年が約630万人だったのに対し、2003年は約562万人と、この8年で1割以上少なくなっているらしい。


全国の献血のべ人数推移(クリックで拡大します)

特に、若い人の献血人数が大きく減っているという。

統計的に、献血をする人は若い人が多く、輸血が必要となる人は高齢の人が多い。だから若い人の献血がこのまま減っていくと、20年後には必要な量の約6割しかまかなえなくなってしまうという予測もある。

 

対策はこれからの課題になる

といっても、これは別に若者の善意が減ってきた、という意味ではないらしい。

「原因はやはり少子高齢化によるところが大きいのです」
と、献血ルーム「池袋いーすと」の深澤さんは言う。

実際、献血量の約8割をになう50才以下の人口は、1995年の約8300万人から2003年の約7600万人へと、献血人数の減少と対応するように、さいきん8年で約1割減少している。

「対策としては、高校などに出張させていただいて、生徒のみなさんに献血のご協力をいただくなど、若年層への推進を行っています」(同)

ということで、スタッフの方々の対応は着々と行われている。けれども、少子高齢化という構造的な問題にどのように対応するかは、ひとり献血ルームの方々の問題というわけにもいかないように思う。

そして今日も献血はつづく

池袋の献血ルームからの帰りぎわ、若い男の子たちが街頭で献血の呼びかけをしているのを見かけた。

聞いてみると、近くにある豊島学院高校・昭和鉄道高校ボランティア部のメンバーで、以前からこのあたりで活動をしているらしい。

深澤さんのお話を聞いた後だけに、照れながらも写真撮影に応じてくれた彼らの姿を、素直にえらいなあと感じてしまうのでした。

あたまが下がります


 

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