お中元やお歳暮の時期になると、毎年印象的なコマーシャルが流れる。ハムの人だ。
お世話になったあの方へ、ハムの箱を手にしてハムを届けるハムの人。ハム好きの私としては思わず画面に見入ってしまう。
ああ、ハムの人。いつかそんな人がうちにも来てほしい。そう思ってばかりだった自分、でも待ちの姿勢だけじゃいけないって気がついた。
ハムを贈る喜びともらう喜びの織り成すストーリーをお楽しみください。
(text by 小野法師丸)
●正体不明の衝動
テレビで見るたびに気になっていたハムの人。私もいつかやってみたい。ただ、今は別にそういう季節でもないし…。
いや、そんなこと関係ないじゃないか。年がら年中ハムあげたい。ハムを取り巻く気持ちに季節なんか関係ない。あげたいからあげる、脈絡だってどうでもいい。
そんな正体不明の衝動が私を突き動かす。やってきたのは肉に力を入れた品ぞろえで有名なスーパーだ。「プロの為の店」という表示もなんだか心強い。
さすがに品ぞろえがすごい。いくらハム好きの私でも、こんなに食べきれないよと言いたくなる量が並んでいる。
さて、今回のターゲットは丸ハム。日常生活でハムを買う場合、やはりスライスになったものが多いだろう。ハムの人としては、そうした日常のハムとは一線を画した丸ハムでスペシャル感を演出したい。
もちろん売り場にそれはあったのだが、予想以上にでかい。
350mlの缶ジュースの倍以上ある大きさ。両手でその大きさを作っていただけるとその過剰な大きさがわかると思う。
しかもそれでもハーフサイズと書いてあるから恐ろしい。一体ハムの大きさというのはどういう規準になっているんだ。
●ジャストミートなハムとの出会い
あまりにも大きなハムは、もらう側にしても喜びを損なう要素になりかねない。そう判断した私がスーパーをあとにして行ったのはデパート地下のハム売場だ。
うん、いい感じのハムがゴロゴロしている。中には布で巻いてある高級ハムもあり、否が応でもテンションが高まる。
数あるきらびやかなハムたちの中から、身の丈にあった感じのボンレスハムをチョイス。ギフト用だと店員に告げると、写真のように箱に入れてくれた。むき出しだった頃よりずいぶん偉そうに見えるハム。
欲しかったのはこのスペシャル感。渡す相手がうらやましい。
ハムだけを買ってデパートを出る。もうこの時点でうれしい。この箱全部にハムが詰まってる。できたらこのハムを持って、どこか遠いところに行ってしまいたい。
ただ、それでは今回の趣旨に反する。あくまでハムをあげる側としての役割に徹したい。