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はっけんの水曜日
 
なりきりアーティスト写真!?

撮影日当日、緊張してはやく目がさめた。
撮影の仕切りをやるの久々だった。編集者のときはしょちゅうやっていた。べつに特別な技術は必要じゃない。どこでいつ撮るのかとか、時間はどのくらいかかるとか、事前に打ち合わせしたことを進行していくだけで、当日はカメラマンさんとかプロフェッショナルの皆様にまかせておけば、なんとかなる。
あとはニヤニヤ見学したり、スタッフがリラックスするように声をかけたり、撮影してるときに通行人が「邪魔だ!」と怒ったら深々とあやまったり、やることはそのくらいだ。
でもやはり、終わるまでずっと緊張が続く。
しかも今回は自分は被写体にもなるわけなので、緊張は倍だ。

坂本くんと堂本さんは、撮影中ずっと「どんな顔していいのか分からないですよ」と繰り返していた。もちろん、彼らはプロカメラマンに撮られるのは初めて。

撮影してるところ。見学のギャラリーがダラダラしてるところが、本物の雑誌取材とは違うところかもしれない。本物はマネージャーも編集者も、にこやかに直立してると思う。

男性陣のメイクは肌の質感の調整くらい。ヒゲ跡をコンシーラーで消したりした。

話してるところの写真が撮りたかったので、疑似インタビューもしてみた。「すいません、好きな女性のタイプは?」「うーん、浮気しない人!」」「いや、もうちょっと具体的な例を言ってくださいよ……」「うーん、好みってないんですよ……。あのね、いちばん初めに付き合った女の子が太ってたんですよ」「はあ」「そのあとは、ずっと痩せたコばっかりですね……」「へえ……」

撮影がすすむにつれ、日が暮れて、寒くなっていく。
バンド撮影のときには、相当辛い気温になっていた。

 

道ばたでメイクされるタカセさん。ものすごい姿勢。

 

「ああギターさわるの10年ぶりくらいだ……うわ、古賀さん、アミタイツはいてきたー」
「気合い入ってますよ!」
「ええと……タカセさん、衣装持ってないっていうから、ロックTシャツいっぱい持ってきたよー」
「ああ、ありがと」
「私のおすすめは、この、パンク風味のノースリーブのやつなんだけど……」
「寒い! ノースリーブ着なーい」
「え、ええー……まあいいけど。古賀さん、脱ぐとTシャツ?」
「そうっす!」
「そうか」
「上着って……脱ぐ?」
「うーん……脱ぐがないと、ねえ」

私は、言い出しっぺが甘えていては格好悪い、と思っていたので、「もしいまバンドで出るなら本気でこの衣装!」というのを着てきていた。ヒステリックグラマーのノースリーブ。年に2回くらいしか着ない服だ。

とやーーーーー! 上着を脱ぐ。

さぶううううううううううう!!!!!!!!!!

気温はヒトケタ。スカーン! と意識がとんでいった。
恥ずかしい、という気持ちはまったく浮かび上がってこない。とにかく、寒い、寒い、寒い!
古賀さんとタカセさんも同じ気持ちだったらしく、照れるよりも、カメラの前に立つことだけで精一杯だった。
……しかし、どちらかといえば、女性は男性よりも、被写体になることに抵抗がないのかもしれない、とちょっと思った。

 

カメラに向かって「ゆ、湯豆腐!」「おでん!」「あつかん!」とか意味不明の言葉をつぶやいていたバンドメンバー3人。

 

トンネルでの撮影が終わって、移動中には既に、メンバー3人は放心状態であった。

「……なんかバンド名考えましょうよ」
「………はまぐり刑事とか、デイリーポータルにちなんだ名前がいいんじゃないかなー」
「はまぐり婦警バンドとか」
「んー」
「デイリーポータルなんとかとか」
「それはダサい!」
「はまぐり……を英語にすると、二枚貝ってクラムだっけ」
「クラムチャウダー!」
「クラムチャウダーなんとかかんとか、って名前がいいな」
「シーガルスクリーミングキスハーキスハーくらい、しゃらくさいのがいいねー」
「クラムチャウダー……なんとかアタックってどうかな」
「じゃあまん中は地名がいい!で、……Cとか、もしくはカ行で始まるのがいい」
「シカゴ!」
「カンタベリー!」
「んー、シベリア!」
「じゃあシベリア!」

もう何を喋っているのかワケがわからなくなっていたが……バンド名は、クラムチャウダー・シベリア・アタックに決まった。

そんなわけで、アーティスト写真と、偽もののプロフィールのあるアーティストが、ここに3組誕生したわけだ。

次ページからはその完成品です。



 

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