宮内さんが利き酒用おちょこを林さんに手渡す。日本酒天国の時のそれとは違って、随分大きい。
「こんなに大きいのでいいんですか?」
林さんが嬉しそうに聞いている。宮内さん曰く、この大きさのおちょこが利き酒用としては正式なのだそうだ。ちょっとした湯呑みくらいある。
どうぞどうぞ。
宮内さんが柄杓で原酒をすくいおちょこに注ぐ。
ごくっ。
「う、うまい」
そうでしょう、と宮内さんが目を細める。どうやらこの原酒には炭酸ガスが少し残っていて、それがまた味に深みをもたらしているらしい。そんな日本酒飲んだことない。
どうなんですか? 林さん?
「ええ、結構強いですよ」
んー、度数じゃなくて、味ですよ、味。
「凄くおいしいです」
「そうでしょう。この時期はブリのカマを肴にすると最高ですよ」
林さんと宮内さんは原酒を囲んでえびす顔。なんでも今年の富山湾は例年になくブリが大漁だとか。油の乗ったブリをいただきながら、この生原酒をキューッと……。
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