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はっけんの水曜日
 
トマトラーメンめぐり

中央線快速に乗って、三鷹まで来た。
南口を出て、中央通ぞい、手芸屋さんの横を入ったところに、「味の彩華」はあった。
塩ラーメンで有名な店らしい。
「どっちの料理ショー」「ニュースプラスワン」に出ました! と看板にでかでかと書いてある。



開店時間を15分ほど過ぎた時刻に到着したのだが、まだ準備中のフダがかかっていた。
でもドアは開いている。

もじもじして覗いていると、おかみさん(おそらく)が出てきて、「いいですよー、どうぞ」と言った。

「まん中の席に座ってくださいねー」

ま、まん中ってどこだろう、と思いながら、意外と広い店内の奥のほうに入る。
結局、はしっこの窓側の席に座る。

メニューを見る。いかにも「デジカメで撮ってデザインしたんだろうなあ」という、写真付きメニューがあった。
………ん、む、トマトラーメン、ないじゃないか。



「野菜たっぷり塩ラーメン」というのは、メニューにあった。この写真にもトマトが入ってる。これのことなんだろうか?

おかみさんに「すみません、トマトラーメンって……これのことですか?」と訊ねてみた。

「あー、メニューをねえ、新しいメニューにしたんですけどねえ、そうしたら載せるスペースが無くなっちゃって……」
……へ?
「あ、じゃあ今は出来ないんですか?」
「大丈夫ですよ。常連さんもね、トマトラーメン専門の人がいるから、顔見ただけで『トマトですね!』って出してますから」
……特に看板メニューじゃないからハズしたけれど、根強いマニアには対応している、ということなんだろうか。

「お客さん、トマトラーメン、どうして知ってらっしゃるんですか?」
「え、あ、人からきいて……」

インターネットで調べた、とはなぜか言えなかった。

おかみさんは笑顔で、新しい、まだ誰も読んでないスポーツ新聞を渡してくれた。
……ん? これは、美容院で待ち時間に、雑誌を渡されるとの同じシステムか。置いてあるのを読むことはあるけど、渡されたのは初めてだなー、と思いながら新聞を広げる。
なになに、ボ・ガンボス、トリビュート盤発売、渡辺美里ら参加、へえ〜……などと芸能欄を読んでいるうちに、トマトラーメンが来た。



具は青菜、ハクサイ、きくらげ、たまご、トマト、そして豆腐が入っていた。上にはすったゴマがかかっている。

ずずー……塩ラーメンだ。味が濃い。乱暴に言うと『天下一品』と『サッポロ1番塩ラーメン」を混ぜて2で割ったような濃さと味。
このくらい濃くないと、トウフは入れられないだろう。
そういえばメニューに「替え玉」もあった。

トマトは……合った。オッケーだ、アリだアリ。
ということは、『天下一品』や『サッポロ1番塩ラーメン』にトマトを乗せても、イケるってことなのかもしれない。

食べてるうちに、店内にどんどん客が入ってきた。年配の男性客が多い。「当然」という感じで新聞を受け取り、注文をしていた。
ああ、地域密着型の店なんだなあ、と思った。

食べ終えて帰ると、お釣を200円くれた。そうか800円だったのか、いまは裏メニューだから値段分からないもんなあ、と思いながら店を出るとき、おかみさんに
「(トマトラーメンを教えてくれた)お友達によろしくねっ」と言われてしまった。
「あ、ハイ……」

●味の彩華
三鷹市下連雀3−26−16






実は今回のラーメン食べ歩き、取材時に、何度も失敗をやらかしてしまった。
営業時間が変わっていた、メニューから削除されていた、店自体が移転していた、潰れていた、など。
ラーメン戦国時代と言われてもう5年以上たっていると思うけれど、「ラーメン店って大変なんだなあ……」とあらためて思った。

……そういえば3年前、男性誌の記事で、ラーメン特集の手伝いをしたことがある。
「ビジネスとしてのラーメン」というお題で、有名店を幾つか取材した。もちろん当サイトのような、きわめて個人的な取材方法ではなく、電話を入れてアポ入れて、カメラマンにラーメンの写真を撮ってもらって、というものだ。

ランチタイムの終わり、だいたい2時過ぎが、取材時間として指定された。
私はテレコを回しながら、メモをとって話をきいた。
ファッション業界からラーメン店に進出して成功をおさめている、コンセプト重視の店のオーナー……みたいな人以外の、小さな店の店主たちには、「……テレコなんて初めてです」と言われた。
普段、情報雑誌がどんなふうに作られているのか知らないけれど、話は聞かないのが基本なのかなあ……と思った。
喜んで、2時間くらい喋ってくれた人もいた。でも、記事コメントには、3行くらいしか使えなかった。
単純に私の要領が悪かったのだろうか。

しかし、トマトラーメンは意外とイケた。うまかった。
でも友人が言っていたように、「時間がたったら、どんな味か忘れちゃう味」のような気もした。

……皆様も、ご機会があったらお試しください。



 

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