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特集


はっけんの水曜日
 
お一人様、朝までカラオケ

●1:00 ひとり椎名林檎・自省大会、開始

 

8曲目『茎』椎名林檎

林檎ちゃんだ。この3枚目のアルバム、歌詞を見るとしみじみとコワイ。
以前、某音楽サイトで知人編集者と「このアルバムってホラーよねえ!」「そうよ、ホラーよ!」となぜかオネエ言葉で対談して記事にしたことがあるのだが、今みたらそのページだけ、なぜかNot foundになっていた。何かマズかったのかしら? いやだわあ〜。

 

9曲目『依存症』椎名林檎

林檎さんの曲を聴いて思い出すのは会社員だった頃のことばかりだ。


辛くて愚痴ばかり言っていた。組織の中にいると、組織の常識で物事が進んで行き、自分の価値観の基準がわからなくなる。仕事量の多さ、人間関係のうまくいかなさ。認めてもらいたいのに認めてもらえない。でも上手く立ち回れない。人をねたんだり、人のせいにしたり……。
恐怖と不安で動いていた。たぶんおそらく、人に失礼なこともいっぱいしたと思う。思い出すたびに顔が赤くなる。


「翻弄されているということは、状態として美しいでしょうか?」……という林檎さんのフレーズに「あっちゃー!」と倒れそうになっていた、当時のわたくし。

 

11曲目『同じ夜』椎名林檎
会社員……私が雑誌編集者の時、林檎ちゃんが社会現象くらいまで盛り上がって、私の働いてる部署でも、彼女についての記事を作ることになった。
しかし、取材依頼が殺到していた林檎さん側は、弱小だった私たちの雑誌に冷たかった。
渋谷でライブをやる時に写真を撮らせて欲しいとお願いしたら、他の音楽雑誌はみんな入れてもらえたのに、ウチだけ「取材は入れてないんですよ、全部断ってますから」と嘘を言われた。食い下がると「じゃあ、これからやる広島公演なら撮影していいですよ」と言われた。
取材費の少ない私たちはホテルもとらずに広島へ向かった。受け付けに行くと、マスコミは他に誰も来ていなかった。担当者に名刺を渡して御挨拶したら、目はそっぽを向いたまま、片手の指先で受け取っていただいた。
ライブは良かった。その夜は安居酒屋で時間をつぶし、原爆記念館を見て帰った。
ちなみにその「そっぽを向いたまま」だった人は、今は林檎さんの担当じゃないそうだ。

 

11曲目『幸福論』椎名林檎

先日、会社員として頑張っている友だちに「上司がいかに無能で困っているか」という話をされた。
そのときに、「……会社員やめてから、会社員のグチって全部パターンが一緒だってわかったんだよねえ」と、つい言ってしまった。
彼女は「ええ?」という顔をした。
過去の会社員だった自分も愚痴ばかりだったのに。愚痴で身体が出来ていたのに。でも今も余裕がない。人にやさしく出来ず、傲慢だ。なさけない。

ちなみにこの『幸福論』のビデオ・クリップには、林檎ちゃんがスチャスチャと自転車で走っていく姿が出るのだが、それが大変に可愛らしい。自分が自転車に乗るときも、時々彼女の足さばきを思い出す。

 

 

「同じ夜」を歌っているときに、自分の空いてるほうの手が動いてしまってることに気づいた。
「歌手はなぜ、手を音程によって上下させるのか? あれは何か、手を押さえちゃうと歌えなくなるのか?」ということを、ナンシー関さんが書いていたな〜と思い出した。

カラオケの選曲の合間の画面に、韓国ポップスの紹介がうつる。小柳ゆきの「あなたのキスを数えましょう」のカバーがかかっていた。Kポップ、売れたりするんだろうか?

 

12曲目 『モルヒネ』椎名林檎
林檎ちゃんの特集記事は、本人にインタビューを断られたまま作ることになった。担当した私は悔しくてヤケクソになり、必死で記事ネタを探した。
「新宿に『椎名淫語』っていうヘルスがあるよ!」と知って、店長さんに手紙を書き、インタビューを申し込んだ。店長さんを待っている間、狭いプレイルームに通された。「こんな機会がなければ、入れない場所だよなあ」と思ってドキドキした。壁には、林檎ちゃんのセカンドアルバムに使われた書体で、プレイメニューが書いてあった。
「どうも、おまたせしました」と現れた店長さんは、スーツ姿で後ろ髪を少し伸ばしていたけれど、文系の香りのする、落ち着いた感じの方であった。
当時まだあった新宿のスカラ座に移動して、お話を聞いた。彼は私と同い年だった。「こういう雑誌の取材なんて初めてですよ、嬉しいです」と『椎名淫語』にした経緯や反響を、丁寧に話してくれた。
その時「音楽が好きなので、将来はロックカフェをやりたいんですよね」とおっしゃっていたのだが、今年オープンしたらしい。オープニングパーティにお誘い頂いたのだが、行けず、そのままだ。Tさん、お元気だろうか。

ビールが飲み終わったので、レモンサワーをリモコンで頼んだ。これも迅速に出てきた。ドアが開き「レモンサワーでございますー」と言って店員さんは膝をつく。そして丁寧にグラスが置かれる。私はその間、恥ずかしくて歌えず、「あ、どうもですー」とか言って誤魔化す。

熱が出て来たようで、頭がじんじん痛くなってきた。レモンサワーのグラスをおでこにあてる。
死にそうだと思いながら「『モルヒネ』ってこれ、オナニーの曲だよ!」と知人が言っていたのを思い出した。

 

13曲目『ギブス』椎名林檎

林檎ちゃんの着ていた看護婦の服、あれは医療関係者ではないと手に入りにくい、特別なメーカーのものだった。それを買える通販サイトを見つけた。「お客さまの林檎ちゃんコスプレ写真公開コーナー」もあったので、そこも取材させてもらった。やはり丁寧に対応していただいた。
私はそんな小さな林檎さんネタを、たくさんたくさん集めた。

『ギブス』には「あなたはすぐに写真を撮りたがる」っていうフレーズがある。これを聞くたびに「今まで私と付き合ってきた人は、私の写真なんか撮りたがらなかったよ。こういうのって、ちょっと可愛い子じゃないと言えない発言だよなあ〜」と考えた。林檎ちゃんの歌詞中で、唯一共感出来ない箇所だ。

あと、この歌詞中に「また4月が来たよ」というフレーズがあるのだが、それに対して、某音楽雑誌の編集部員が全員、
「それってカート・コバーン(ニルヴァーナというバンドのボーカル、伝説のロックのカリスマ)の命日が4月だから4月なんですよね?」
と解釈しており、その件について別の雑誌で、林檎さんが「ちがう」「そういう深読みは困る」と答えてたのが、ちょっと面白かった。

 

14曲目『ここでキスして。』椎名林檎

徹夜に徹夜を重ねて、私は林檎ちゃん特集を作った。
そのあと、なんと、編集部あてに、本人から「面白かった」と連絡があった。
嬉しかった。とても。
でも様々な事情があり、ご本人に逢うことはかなわなかった。
新宿のリキッドルームで、見かけたことはある。エレベーターの中で一緒になった。なぜか、誰も彼女が椎名林檎だということに気がついていなかった。
声はかけられなかった。

 

15曲目 『葬列』椎名林檎
この曲もコワイ。サードアルバムの最後に入っている曲なのだが、「……こんなのを夜中にひとりで歌っている私がホラーだよな」とも思った。

めまいがしてきて、少し休憩した。携帯電話でメールチェックをしたり、ミクシイを見たりした。メールはスパムだらけで、ミクシイは誰も更新していなかった。日曜日の夜中は、やはり早く眠るものなんだろうか。

 

16曲目『罪と罰』椎名林檎

 

17曲目『本能』椎名林檎

 

こないだマエケン(前田健、あややなどの形態模写で有名)がこの看護婦スタイルで「本能」を歌っていた。目をひんむいて、あぶない表情をしていて、かなり似ていた。


18曲目『丸の内サディスティック』椎名林檎


19曲目
『正しい街』椎名林檎

 

20曲目『りんごのうた』椎名林檎

 

21曲目『月に負け犬』椎名林檎

 

22曲目『時が暴走する』椎名林檎

もう乱れ打ちで林檎ちゃんばかり歌ってみた。『時が暴走する』なんて、縦型シングルを普通のマキシの形にして再リリースした『幸福論』(デビュー曲)のB面、という曲なので、知ってる人も少ないかもしれない。

曲が終わると、合間にうつる画面が、Kポップから日本のポップスに変わっていた。
トミー・フェブラリーが歌っている。夜中の体調の悪い時に見るトミフェブは、かなり、きつい。スカートの赤が、目に痛い。
私は持っていたアスピリンを取り出して、レモンサワーで飲み込んだ。うえー。でも歌う。

 

23曲目『群青日和』東京事変

林檎ちゃん、新ユニットのデビュー曲。『週刊文春』の「考えるヒット」では「力自慢の曲」と解説されていたけれど、その説明、分かるような、分からないような。
私も、この曲は好きだけれども、林檎ちゃんの曲を好きになるのと感覚が違う。


林檎ちゃんは、もう一生暮らせるくらい、稼いでしまっているだろう。売れたし、作品として評価もされたし、私生活では結婚して離婚して、子供も産んでいる。
それでも歌い続ける。かっこいいよなあ、と普通に思う。

 

 

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