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特集


はっけんの水曜日
 
お一人様、朝までカラオケ

●2:30分、他人の歌った歌を歌う

……林檎ちゃんをあらかた歌いつくし、今度は趣味に走った選曲をすることにする。

 

24曲目『涙のブレイクアウェイ』スクーターズ
スクーターズというバンドは、信藤三雄という超有名デザイナーさんが、昔やっていた伝説のバンド。小西康陽さん(『慎吾ママ』の曲などを作った人)は、このスクーターズを見て、「ああいうバンドが作りたい!」と思って、ピチカート・ファイヴを結成したのだという。
スクーターズはなぜかよく雑貨屋でかかっている。キョンキョンもカバーしているので、知ってる人は多いんじゃないだろうか。
この『涙のブレイク・アェイ』は、学園祭バンドでボーカルに3人の女の子を立てて、カバーたら絶対にウケる曲だ。おすすめです。

曲が終わると画面が変わって、モーニング娘。のシャフルユニットの、しかもちょっと古いヤツのクリップがかかった。
モーニング娘。は、いつも誰かが心身の調子を崩していて、太ったり痩せたりしているので、「ああこの頃は誰々が不調だったんだな〜」なんて思いながらながめた。

25曲目『そのぬくもりに用がある』
これはサンボマスターという人気バンドの曲だ。
サンボマスターが好きな友人とカラオケに行ったとき、この曲を熱唱されて、あまりの迫力にびっくりして覚えた。
そういえばスマップの「世界にひとつだけの花」も、初めて聴いたのは、カラオケボックスだった。しかも当サイトwebマスターの林氏の熱唱によって。
「これ、スマップのアルバムの中の曲なんだけど、いい曲でしょう! マッキーが作曲しててね、まあマッキーのいろんな曲をつぎはぎにしたような曲だけれど……」
へえ〜と思った。
そういう「曲の知り方」も、多いんだろうなあと思う。

 

バイアグラ(ロシアのお色気系ユニット)とかあるのな。

 

レモンサワーの飲み終わって、アーリータイムスのソーダ割りをオーダーする。
私は洋酒が苦手な体質で、ウイスキーのソーダ割りとか、飲むと大変キいてきて陽気になるのだが……必ず二日酔いしてしまう。
禁断の酒を飲む。ちょっとヤケクソだ。
あらゆる部分が痛い。首のうしろ、背中、頭痛、目の奥がじんじんする……。でも歌う。

画面がまたトミフェブのビデオになった。彼女を見ていると、音楽番組で話していた「家賃をねぎった話」とか「家ではずっとジャージ」とか、変なことを思い出してしまって、素直に「カワイイ」と思えない。いや、好きなんですが。

新譜本をまた、パラパラとみた。意外な曲が入っていた。

 

26曲目『未来は俺等の中』ザ・ブルーハーブ
ブルーハーツではなくて、ブルーハーブという、ヒップホップのユニットだ。で、そのヒップホップの人が、ブルーハーツの『未来は僕等の手の中』をカヴァーしているという作品。
いろんなバンドやユニットが参加した、ブルーハーツ・トリビュート盤のために作られた曲らしい。しかし、他のバンドは単なるカバーなのに、彼らだけは「未来は俺等の中」という部分以外は全く違う詩で……「本来のトリビュートってこういうもんだろう!」みたいな、素晴らしい別の曲になってしまったのだ。で、トリビュート盤には結局収録されず、インディーズのシングルとして発売になった。

私はそのインディーズ盤を持っている。試聴して、即買いした。繰り返し聴いたから歌えるかしら、でもラップなんて無理かしら、と思ってやってみたら……意外とできた。
自分でびっくりした。すんごい早口な曲なのに。面白くなって、もう一度歌った。

 

27曲目『未来は俺等の中』ザ・ブルーハーブ
うお、楽しい! と思い、何かまたラップをやってみたくなった。しかし、私はヒップホップをまるきりというほど知らない。エムフローとSHING02という人くらいしか好きじゃない。しかしエムフローは難しすぎるし、SHING02はカラオケなんかに入ってない。

 

秩父音頭が新譜で入ってた。こういうのの選曲ってどうなってるんだろう。

 

ああ、そういえば昔、スチャダラパーを聴いていた! ということを思い出し、入れてみた。

 

28曲目『ついてる男』スチャダラパー
……なぜか、全然うまくいかない。歌詞も覚えているのに。理由が分からない。

煮詰まってしまったので、「えいやああああああ」と、適当に開いたページの中で、知ってる曲を探して歌うことにした。

しかし、1曲も歌えないページが、いくつもあった。B'zなんて、見開き全部がB'zなのに、申し訳ないけれど歌えなかった。

 

29曲目『スパークリング・ダイアモンド』(映画『ムーランルージュ』サントラより)

29曲目『スパークリング・ダイアモンド』(映画『ムーランルージュ』サントラより)
かろうじて歌える曲を探した。マリリン・モンローの曲と、マドンナの曲を足して作った曲を、ニコール・キッドマンが歌っているというヤツだ。
……うまく歌えなかった。こういうのを、キラッキラの衣装を着て歌い踊れるような才能が欲しい。

しょうがない、また自分の趣味の曲を探そう、と歌本を読み込んだ。

 

●3:15、趣味に走る、思い出にひたる

 

30曲目『サマーヌード』真心ブラザーズ

真心ブラザーズが好きだ。しかも実は、大学のサークルの先輩だったりもする。
しかし会えたのはほんの数回で、そのたび、「はじめまして」と毎回言われた。木っ端キャラの新人女子なんて、顔を覚えてもらえないんだなあ〜と思った。別に腹も立たず「そういうもんだ」と感じただけだったが。
「サマーヌード」は、松本伊代さんがテレビのトーク番組で「妊娠中、同じ曲ばっかりどうしても聴きたくなって、それが『サマーヌード』って曲なんですけどね!」と話しているのを聞いてしまってから、サマーヌードを聴くたびに伊代を思い出してしまって困っている。
しかも、そのトークの中に「真心ブラザーズ」を知っていそうな人はおらず、周りの反応は「……へえ」という冷たいものだった。寂しかった。

 

31曲目『パレード』つじあやの

つじあやのさんの山下達郎のカバーだ。デビュー直後の彼女のライブを見たことがある。ガヤガヤいってた観客が、彼女が歌いはじめたとたん、一瞬で集中した。
「すげえ! なんだこのほとばしるパワーは! ぶっとい感じ! かっこいい!」と思い、一度インタビューさせてもらったことがある。
小さくてやさしくてやわらかく、穏やかな人だった。

次に、ラブタンバリンズを入れてみた。元祖渋谷系みたいなユニットだ。
……しかし「本日は選曲できません」となぜか出た。なぜだろう。

画面はまたJ-popのビデオクリップになった。林明日香が流れる。彼女はどうしていつも、大袈裟なテーマの曲ばかり歌うのだろう。

 

32曲目『RUNNING MAN』フィッシュマンズ

学生のころ、池袋パルコの山野楽器でバイトしていた。
そこになぜか、新アルバムの営業のために、フィッシュマンズのメンバーが来る、ということになった。フィッシュマンズのボーカルの佐藤さんとドラムのキンちゃん、そして山野楽器の社員さんとバイトの私は、パルコ内にある、ロココな作りの変ちくりんな喫茶店で、お茶を飲んだ。
佐藤さんファンの社員さんは、彼をがっちりキープ。私はキンちゃんとばかりお話をした。
その時、ポラロイドで写真を撮った。社員の人が「ありがとうございます!」と、それをポケットに入れた。それを見て佐藤さんが「じゃあ彼女(私)の分も撮りましょう」と言ってくれて、もう1枚とった。
しかしその写真は、「佐藤さんの表情の映り具合が違うから、両方欲しい、あとで複製してあげるから持って帰る」と言って、社員さんに取られてしまった。
その後、写真は複製してもらえず、私はバイトをやめて、それっきりだ。
だから、私と佐藤さんとキンちゃんの写真は、この世には存在するだろうが、手元にはない。

佐藤さんが亡くなった時は、お葬式に行った。音楽葬で、脱退した元メンバーなども皆が参加して演奏していた。「いかれたBABY」という曲のイントロがかかったとたん、並んでいたファンが一斉に泣き出した。私もあの曲にスイッチを押され、ダアーッと泣いた。
だから「いかれたBABY」もカラオケに入れて欲しい。

33曲目『100ミリちょっとの』フィッシュマンズ
これは昔、深夜にやっていた「90日間トテナムパブ」という番組の主題歌だった。
この「トテナムパブ」が、忘れた頃に再放送していたことがあった。私がたまたま夜中に起きて、テレビを付けたら、終わったはずの番組がやっていて……「私、タイムスリップしたのかな?」と寝ぼけながら思ったことがある。バカだ。

もう3時30分。空は明けてきているんだろうか。窓がないから分からない。

 

34曲目『天使たちのシーン』小沢健二

この曲は大変に長いので、「オザケンファンサークルのカラオケオフ会」などでは、「禁じ手」にされていたという噂を聞いたことがある。
ちなみに大槻ケンジさんも、この曲をカバーしている。

 

35曲目『フィジカル』オリビア・ニュートン・ジョン
最近、スパンク・ハッピーというユニットが好きなのだが、カラオケにはないので、彼らがカバーしている曲でがまんしてみた。

ここで洋楽本を開いてみる。

 

 

36曲目『ディス・チャーミング・マン』ザスミス
思いっきり後ろ向きに、伝説のバンド、ザ・スミスを歌ってみる。
ちなみに私の友人に大のスミスファンがいるのだが、あのt.A.T.uがスミスのカバー曲をやったことに対して、嫌がっているのかなあ、と思ったら違った。
「作詞作曲した彼らにたくさん印税が入る! 嬉しいことです」と。素晴らしい、ファンの鏡だ。

 

37曲目『カーニバル』ザ・カーディガンズ
これは「渋谷系」「スウェーディッシュポップ」が流行ったときに売れに売れた洋楽アルバム。
ここのボーカル、スウェーデン人のニーナちゃんは来日時、「日本人の女の子はみんな小さいので、私がデカい女に思えて、ちょっとイヤだった」とコメントしていた。北欧のコはでかいのだ。
ということは、私(172センチ)が北欧へ行けば、小柄気分を味わえるのかもしれない。

 

38曲目『ドリームス』ザ・クランベリーズ

フェイ・ウォンがカバーして、映画『恋する惑星』でも流れている、美しい曲。
いま、ネスカフェのCMにも使われているのだが、なぜかイントロ部分のみで、歌の出だしまでいかない。イントロのみ使用って変だ。クランベリーズ側はどう思ってるんだろう?

ああ、こめかみがズキズキする。いててててて! でも歌う!
ここで日本酒をオーダー。

 

小瓶で持ってこられて、ちょっと驚いた。
コップじゃないんだ……。手酌でぐいぐい流し込む。

 

39曲目夜来香(イエライシャン)李香蘭

夜来香、知っていたけど聞いたことがない曲だった。
大島弓子のマンガ『秋日子かく語りき』の中で主人公が鼻歌で歌うのだけれど……図書館で李香蘭のCDを借りて、メロディラインを覚えた。

……日本酒を飲む。
もう歌いたい歌がない。
困った、と思いながらページをめくる。
うーん、うーんと考えてたら、なぜか「涙のジャスミンラブ」という、おニャン子クラブ・河合その子の曲を思い出した。探してみたけれど、なかった。
なので、彼女の別の曲を歌った。

40曲目『青いスタシオン』
ああ、いい曲だわ。

次もテキトーに探す。

41曲目『ナウ・ロマンティック』KOJI1200
今田耕司が好きだ。今ちゃんのエピソードの中でも、
・今田が車の中でひとり、じっと何か音楽を聴いていたので、近付いてみたら、でかい音で自分の曲を聴いていた(松本人志談)
というのと、
・今ちゃんがとある年末12月31日、オフで近所の定食屋に行ったら、テレビで紅白歌合戦がやっていた。そこで「明日があるさ」が歌われていた。それを見た店のオバちゃんに、「アンタ、こんなとこにいてていいの!? アレに出るんじゃないの!?」と言われた。
という話が好きだ。

42曲目『WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント〜』
この曲が紅白に出た年、小沢健二さんも出てて、浜ちゃんと一緒に盛り上がっていたなあ。

43曲目『WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント〜』
2回歌ってみる。
……「ああエキセントリック少年ボウイ」も歌おうかな、と思ったけどやめた。
昔、仕事の打ち上げでそれを歌ったら、「ああウドンくらいしか食べる気がしない〜」とかいう歌詞なので「辛気くさい」と怒られたことを思い出したからだ。

 

44曲目『クレイジー・イン・ラヴ』ビヨンセ

いきなり外人にまた挑戦してしまった。でも難しい曲なので、やっぱり歌えるわけがなかった。

もう4時だ。あと1時間で始発のある時間になる。
しかし、日本酒がぐるぐるぐるぐる、頭に回りはじめた。

 

●4:00、自分の青春に復讐される

もう4時だ。あと1時間で始発のある時間になる。
しかし、日本酒がぐるぐるぐるぐる、頭に回りはじめた。

45曲目から、小沢健二さんとコーネリアスがかつて組んでいたユニット、フリッパーズ・ギター歌いはじめた。
そしたら、止まらなくなった。

 

『奈落のクイズマスター』『偶然のナイフ・エッジ・カレス』『スリープ・マシーン』『ドルフィン・ソング』『全ての言葉はさよなら』『グルーヴ・チューブ』『バスルームで髪を切る100の方法』『ラテンでレッツ・ラブまたは1990サマービューティー計画』『ウィニー・ザプー・マグカップ・コレクション』『さようならパステルズ・バッジ』『アクアマリン』

「すいませんがお飲み物のほうラストオーダーになりますけど、よろしいでしょうか?」
八嶋智人を10歳くらい若くさせたような、これまたパキパキした店員が入ってきた。やはり笑顔だ。なんなんだろう、この徹底した社員教育は。

「……じゃあ、コーラサワーを」

続けてフリッパーズを歌う。

 

でも結局飲んだの、5杯くらい。

 

『ゴーイング・ゼロ』『ピクニックには早すぎる』『やがて鐘が鳴る』『レッド・フラッグ』『フレンズ・アゲイン』『カメラ!カメラ!カメラ!』
最後には絶叫していた。
17歳のときに出会ったフリッパーズ・ギター。フリッパーズが好きでミニコミを作った。それがキッカケで文筆業界に入った。あれから10数年、ずっと書いてるけど一向に文章力は上がらず、ぱっとしない。

人とカラオケに来たときには、恥ずかしいから、めったにフリッパーズは歌わない。でも追い詰めると歌っちゃうんだなあ、ということが分かって驚いた。

今回、歌ったのは61曲。

「歌は人生とともにあるっていうけど、ひとりカラオケって、自分の人生を振り返る作業になっちゃうのかあ……」

早朝の西武新宿駅は静かだった。
身体は疲れていたが、何かつきものがおちたような感覚があった。

ひとり朝までカラオケ、貴方も是非、一度やってみてください。


 

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