私が何をしていたかというと

今日は魚屋修行だ。ヒデさんと若だんなについて私が何をしていたかというと「邪魔にならないように」していました。

ターレーにひかれないようにはじっこを歩き、並ぶ魚の写真を撮っている間に先を急ぐ二人を追いかけ（二人が派手な色の上着を着ていてくれて助かった）、店の方との軽快なやりとりを羨ましがりつつ盗み聞く。手伝えそうなことは何もない。

東京じゅうの活気を集めましたというカシのテンションの高さについていくので精一杯なのだ。世間一般で朝テンションの低い人が多いのは、築地に活力を吸い取られてるからじゃないか。

もう途中からは無理に働こうとせず、そこらじゅうに並びまくる魚達を眺めることにした。邪魔になるよりはよかろう。わーあ、魚、おいしそうだあ。

買い付けが終わると朝8時に。買った魚が先ほど車を駐車した場所に仲卸し業者さんが運んでくれるまで少し時間がある。そういえば朝ご飯をヒデさんも若だんなもまだ食べていないはず。私もお腹ぺこぺこだ。やっぱアレだ。場内の旨い店なんかで寿司でも食べるんだろうか。期待が高まる。

コーヒー？
「好きなもん頼みなよ。おごりだから」
わーい、ありがとうございます、若だんな。しかし、入った店が喫茶店なんですが…。寿司とか食べないの？

そもそも二人は大抵忙しくて仕入れの後に店に入ること自体が少ないらしい。普段は車の中でおにぎりを食べることがほとんどだそうだ。

ヒデさんはトーストを、若だんなはミックスサンド、私はチーズトーストを頼んだ。お魚気分で完全にスタンバイされていた胃に入るチーズトースト。これも魚屋修行のうちなのか。

そもそも市場の中に喫茶店があることすら知らなかったのだが、築地場内には診療所や床屋もあるらしい。魚市場の隣は野菜や果物の市場になっている。ヒデさん曰く、築地にないものといったら「パーマ屋とパチンコ屋ぐらいのもん」だそうだ。

「築地にパチンコ屋なんかあったら業務がたちゆかなくなるよ。ここらは賭事好きの集まりだから」なんとなく分かる気がする。

喫茶店を出ると、寿司屋の前を通りかかった。行列になっていて、水商売とおぼしき女の人もいる。おお、これってもしかしてアフター？　築地場内、いろんなものが渦巻きすぎ。