ごくごく普通の駅なのに
西武秩父線、高麗駅。山に囲まれ、ハイキングや遠足で訪れる人も多い。が、駅利用者の大半は駅を降りて南側の団地の住民だ。
山の斜面にずらずらずらずらっと約2,000戸の家々が立ち並んでいる。もともとこの辺りに住んでいた世帯の他に関東近県から新しく引っ越してきた世帯も多い。私の実家もそのうちの1軒だ。
池袋までスムーズに行けば1時間強と微妙に通勤可能な都会へのアクセス具合で、学生時代は都内へずっと実家から通った。父も一時は築地の会社まで2時間半かけて通っていた。いわゆるベッドタウンというわけだ。
そこへ、まさに台風のように9月の曼珠沙華開花期間、観光客の皆さんが大量に押し寄せる。
私が高校生のころはハイキングルックの人々がひしめく駅のホームに制服で降りるのがどうも恥ずかしかった。東京に近いけど東京じゃない埼玉っこゴコロを絶妙に刺激されたのだ。
観光地に住む人がその名所に行ったことがない法則の例に漏れず、私も結局曼珠沙華を見に行ったことは一度もない。その後、都内に引っ越してきてからは曼珠沙華シーズンの帰省もなんとなく避けてきた。
今年は例年にも増して大変なことに
9月中旬。今年もそんな地元駅大混雑シーズンがやってきた。
今年はまた例年に増して力の入った観光客誘致が行われているらしい。実家の家族による報告では、駅も曼珠沙華開花に合わせて改修作業がアテネばりの急ピッチで完了したそうだ。
気合い十分。町は頑張っているのだ、私も大人になったことだし、いい加減目をそらさずにその様子を直視しなければいけない時期にきているのかもしれない。重い腰をあげ、恐る恐る初めての群生曼珠沙華目撃を決意した!
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