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特集


ロマンの木曜日
 
うなぎを待ちながら

東京大学海洋研究所
助手の青山潤さん
うなぎの仔魚、レプトケファルス
2人乗りの小型潜水艇を使っての調査
魚群探知機を使っての調査

東京大学海洋研究所にうなぎを研究しているチームがある

1991年、東京大学海洋研究所の塚本勝巳教授率いる研究チームが、ニホンウナギの回遊ルートを発見した。その発見によると、ニホンウナギはマリアナ諸島西方から黒潮に乗り、半年以上かけて日本にやって来る、というのだ。
正直、うなぎが回遊魚だったなんて知らなかった。

塚本教授研究室にお邪魔して、助手の青山さんから詳しい話を伺った。

「サケもうなぎと同じ回遊魚ですが、サケの場合は川で生まれ、海に出て成長し、川に戻り産卵します。うなぎはその逆で、海で生まれ、川で成長して海の産卵場に戻っていきます。日本のうなぎはマリアナ諸島西方海域で生まれ、日本の川にやって来る訳です」

そもそもうなぎは、卵→レプトケファルス(仔魚)→シラスウナギ(透明なウナギの稚魚)→クロコ→黄ウナギ→銀ウナギ(成熟)という成長段階を経て産卵にいたると言われている。

レプトケファルス段階のうなぎが、マリアナ諸島西方海域から海流に乗って日本近海にやって来て、シラスウナギへと変態し川に入る。そこから更に成長を続け黄うなぎとなり、5年から10年は川にいる。普段僕たちが口にする天然うなぎは、この黄うなぎだ。

「これまでにレプトケファルスが日本にやって来るルートは解明出来ましたが、親うなぎがどうやって海に出て、どこで産卵しているのか、実は全く分かっていません」

うなぎが海で産卵する事は分かっていても、親うなぎの姿や卵はまだどこの海洋でも見つかっていない。

親うなぎの産卵場を見つければ、世界的な発見となる。

「現在、私たちはニホンウナギの親の産卵について、2つの仮説を立てています」
1.新月説
 ウナギの産卵は新月に起こる。
2.海山仮説
 マリアナ諸島西方の3つの海山(スルガ、アラカネ、パスファインダー)で産卵している。
 
長年に渡る調査から、上記の仮説に行きついた。そして青山さんたちはこの仮説に基づき、うなぎの産卵場を探し続けている。

「今年も5月から7月まで調査して来ました。来年、再来年と調査は続けていく予定です」

まだ誰も見た事のないうなぎの産卵場を、いつか青山さんたちが見せてくれるかもしれない。そんな海洋ロマンに思いを馳せつつ、舞台は再び世田谷の一二三へ。

そろそろうなぎが来る頃です。

東京大学海洋研究所 行動生態研究室

 


 

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