まずはキャッチボールで肩をあたためる
河川敷グランドには先客がいた。 中学生くらいだろうか、4、5人のグループでバッティング練習をしている。
「とりあえず端っこでキャッチボールから始めましょう」
中学生グループが終わるまで、キャッチボールで肩ならしだ。
キャッチボールなんて何年ぶりだろう。 多分、前にこのユニフォームを着て以来だから12年ぶりくらいになる。
なーに、これでも小さい頃は少年野球で鍛えた肩だ。 12年のブランクなんて……、えいっ!
思いっきり左にそれた。しかも届いてない。 後ろにそれたボールを追って高野君が走る。
「ごめんなさーい!」
おかしいなあ……。 首を傾げていると高野君から矢の様な返球が。
球の回転、重み、さすが高校野球の経験者だ。グローブをはめている左手がジンジンする。
そして、僕の腰の引け具合はなんだ?
「今度はちゃんと投げます!」 振りかぶって、えいっ!
今度は大きく右にそれた。 さっきよりも遠くに転がっていくボール、走る高野君。
「本当に、ごめんなさーい!」
12年のブランクは思ったよりも大きかった。 子供の運動会で徒競走に参加して転倒するお父さんの気持ちが痛いほど分かった。 「まだまだやれる」っていう気持ちばかりが前に出て体がついてこないから転ぶのだ。
怪我だけはしない様にしよう。 ボールを追い掛ける高野君の後ろ姿を見て、そう思った。