初級編:まずは一本歯に慣れよう
一本歯の高下駄を履く訓練を行うにあたり、転んでも怪我をしない様にエルボーパットを購入した。スポーツ用品店のサッカーコーナーにあって、ゴールキーパー用らしい。
参考図書「古武術で蘇るカラダ」(前出)によると、一本歯に慣れるためには段階を踏まなくてはならない。 第一段階として、 「樹木や壁づたいに立って歩くことからスタートだ」 という事だ。
一本歯の高下駄を履いてゆっくりと立ち上がってみた。 予想以上にグラつき、不安でいっぱいになる。始めてスキー靴を履いた時に感じたあの感覚、「絶対骨折れる!」。
慎重に金網に近づき、金網づたいにゆっくりと歩き始める。
僕の横をテニスラケットを持ったおばさん2人組が通り過ぎる。 見ちゃダメ!2人とも暗黙の了解で僕の方を見ようとしない。完全に僕を追い越すまで無言な2人。
「いや、これはですね、ボディバランスがですね…」
追っかけて弁解したい気分だが、こんなグラついた足元では追い掛ける事すら出来ない。 まあいいさ。あの2人は素晴らしいボディバランスを手に入れる事が出来ないのだから。
気を取り直して何往復か金網づたいに歩く。 だんだん慣れてくるのがわかるが、ここで気を抜いたらいけない。 交通事故は自宅に近い場所で多く起る。慣れた場所で気を抜くと事故を招くのだ。
とにかく怪我だけはしない様に。慎重に次のステップに進む。
第2段階は凸凹のない平地でどこにもつかまらず歩く、だ。 なるべく平たい場所を選びゆっくりと歩く。 チョコチョコチョコチョコ。 自分の様子を見る事は出来ないが、きっとカラクリ人形の様になっている。 この動き、アシモに近い。
参考図書の中でも、著者とアシモの開発者の対談が掲載されている。その中でアシモの開発者、田上勝俊氏は二足歩行成功のポイントについてこう語っている。 「倒れそうになった方向へ積極的に加速させることで、姿勢を回復させる。これが安定歩行の決め手になりました」 転ばせないために、転ぶ力を利用する。 これが、古武術的な発想とも通じるという事だ。また、田上氏は安定でも不安定でもない「非安定」を維持する事が大切だ、とも言っている。今の日本は安定を求めるがあまり、創造への気運が薄いのでは、と忠告する。
そんなアシモ歩きも板についてきましたので、次のステップに進みます。 次のステップは砂利道です。
砂利道での歩行に挑戦するが、これが結構危ない。 滑りやすく、足を取られてしまう。平地の時より更に慎重に歩く。いつもよりゆっくりなアシモ。
砂利道をマスターしたらいよいよ最終段階。 「路面に凸凹のある坂道の下り」 そういう坂道を走って下れるようになったら、「達人」の域らしい。
本当にそんな事出来るのか?