「ちょっと、ちょっと大塚さん、これ大塚さんも試してみてくださいよ!」
「ん? はい?」
林さんはダシの素を試飲してみていた。商品名は「コクデール」。
「これ、ただのダシ汁なんですよ。これにちょっとコクデールを垂らすと……全然味が変わるでしょう?」
売り子さんが説明してくれる。
たしかに、ほんのり風味は変わった。
「あ、ほんとですねー」
「これ魚醤入ってるんですー」
「なんの魚醤なんですかー?」
「イワシの魚醤なんですよー」
私は振り向いて、ニコニコしている林さんに、小さい声できいた。
「……これ、林さん、味、わかったんですか?」
「いや、オレ全然分からなかったんですけど、……欲しい! なんか欲しい! 魔法薬っぽいのに、弱いんですよ!」
ワケがわからない。
タカセさんは「揚げたニンニク」をひと粒試食し、「これください」とスグに決めていた。
「ああ、このニンニク、食べ始めたら全部食べてしまいそう…」
「鼻血出そうですねー」
私はというと、いったんユズの試飲にはまったら、ユズばっかり目に入ってしまって困った。ユズ、おいしいユズ……ユズに夢中。結局獅子ゆずも買ってしまった。
物産展に行くと人の性格がバレる気がする。
|