で、今回は「都内の道ばたでリリカルな菊をさがそう」と思っていたのだが……。

「横浜のほうに、菊に囲まれた民家、菊御殿というのがあるらしい！」
という噂をきいて、急きょ方針変更。

ぶっといリリカルを探しに行くことにした。

菊の御殿をさがして

品川から電車に乗り、京急富岡でおりる。

静かな住宅街の広がるところだ。神奈川県らしく、坂道が多い。

「その御殿は駅から歩いて５分の、富岡小学校のそばにあるらしい……」
そこまでしか知らなかった。とりあえず小学校の周辺を歩いてみる。

気のせいか、菊の花を育てている家が多かった。小学校にも、菊の鉢が並べてあった。みんな満開だ。

地元の人とおぼしき、年配女性２人組が歩いていたので、道をきくことにした。

「あのう、このへんに、菊で有名なお家があるって聞いて、来たんですが…」

「ああ！　ええ、ありますよ！」
「菊御殿ね！」
「ここ、ここね、まっすぐ行くでしょ？」
「そう、まっすぐ行ってねえ」
「左に曲がると、階段が見えるのよ」
「階段がね、見えるのよ」
「そこね、そこ登っていくと、すーぐ見えてくるから！」
「見えてくるのよ！」
「すぐ分かるからね」
「分かるわよ！」

２人は丁寧に、ステレオで説明してくれた。

ありがとうございます、と私は言って、言われたとおりに歩いてみる。

階段を登りきり、さらに坂を登ると、その家が左手に見えてきた。