父の彫刻
父は9年前、東京から生まれ育った宮崎に引越した。地元の能面会に入って木彫りの彫刻を作っている。僕の父は陽気なのだが、木彫りになるとどうしたんだろうというものを作る。
「な、なにこれ?(作品1をみて)」
「ああ、荷物をしょった人だな」
「宇宙人?」
「いや、作ってるうちにこうなるんだ。こう、重い荷物をしょってる感じを出したんだ」
「………怖いなあ」
父が作る彫刻の顔を見ていると、父はポリネシア生まれなんじゃないかと思う。日本人のルーツとか考えてしまうが父はそんなこと気にしていない。
色を塗ったのもある
着色した作品もあった。
「これはなんで黄色に塗ってあるの?」
「あ、ああ、これか」
がさごそ。なにかを箱から取り出した。
「これをバラして使ったんだ」
「プリンタのインクカートリッジじゃん。エプソンの」
「なかにまだインクが残ってるんだよ」
「え、まさか…」
予想通りだった。プリンタのインクカートリッジにインクがあまっているのをもったいなく思った父は、それを自作の彫刻に塗ったのだ。
黄色という選択は、ただその色のインクがあまってたから、という理由からだ。
「塗るための道具も作った」
竹の棒の先にスポンジをつけた道具を見せてくれた。ちなみにこのスポンジもなにかの廃材である(聞いたけど忘れた)。
「これで叩くように塗るといい感じになるんだ」
これを能面会の作品展に出展したのだという。
「林さんのは能面じゃない、って言われたよ」
いいとか悪いとかは判断しかねるが、能面というよりアウトサイダーアートだと思う。
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