ビールを先に飲むと餃子が入らなくなるが、酷暑の日のビールの誘惑には逆らえない。
中華料理店やラーメン屋に入って「とりあえず餃子とビール!」とオーダーできるのは大人だと思う。
ちなみに私はそれを初めて実行したときのことをアリアリと思い出すことができる。
3年ほど前住んでいた場所の近所に汚いラーメン屋があった。ラーメンもそれなりにうまかったが、ここの餃子が絶品だった。
終電で疲れきって帰ってきたある日、私は「ビールと餃子!」というオーダーに挑戦してみることにした。時間は深夜1時すぎ。一応20代前半の若い女子がラーメン屋で1人で食事をする時間ではない。
カウンターに座り、勇気を出してそのオーダーを告げる。
オーダーを聞いたラーメン屋のおばちゃんは、瓶ビールを1本だし、コップを私の前におくと、ビールを注いでくれた。
「お仕事大変ねえ……」
おばちゃんが私になにを想像したのかはわからない。そして、ラーメンの具用のゆで卵とチャーシューを私の前に出した。
「サービスよ」
そう言うとおばちゃんは餃子を焼き始めた。
思えばあの店の常連になる前はそんなに餃子のことが好きではなかったかもしれない。
それにしてもあの餃子はうまかった……。
そしておばちゃんに注いでもらったビールはうまかった。
などという話をしながら、餃子が手元にやってくるのを待つ。
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