ハトは害鳥でもいい鳥でもなく、ただ街にいる。空気や水のようにただ、いる。おいしい空気や水が当たり前ではないと言われるようになっても、ハトは当たり前にいる。街の無意識。
そのハトで文字を描きたいと思った。
マスゲームのようにハトが文字の形に並ぶのだ。無秩序にただいるハトをならべてみたい。混乱から秩序を!(text by 林 雄司)
葛飾編
ハトには餌をならべて並んでもらう。パン粉とポップコーンを用意した。場所は家の近所の川原だ。また、ハトが並ぶ様子はビデオカメラを三脚に固定して撮影する。
まずはパン粉でもとになるラインを敷く。
しばらく待つ………。 ………。 ハトがこない。 隣接する区立体育館の壁にとまってこっちを見ている。警戒しているようだ。ついでに公園を通る人も寄ってこない。
このままだとパン粉で地面にハトと書いただけに過ぎない。パン粉文字だ。
ポップコーンを投入するとハトがいっせいに寄ってきた。 パン粉よりもポップコーンのほうが好きみたいだ。パン粉がごはんならば、ポップコーンはハンバーグだろうか。ポップコーンがなくなるとしかたなくパン粉もついばみはじめるが、どうも食いつきが弱い。
そこで、「ハト」と再びパン粉で描き、パン粉の文字のなかにポップコーンもならべることにした。