あらゆる場所に猫がいた
千住はどういうわけか、猫だらけだった。
あらゆる場所に猫がいた。公園、路地のあいだ、塀の上、道ばた、車の上、車の下、自転車の下、商店街、店の前、店の中。
今まで行ったどの町よりも、猫密度が高かった。ちょっと気をつけて歩けば、すぐに猫と目が合う。
路地の多い町並みが、猫にはものすごく住みやすいのだろうか。 町の住民が、あたり前のように、猫をかわいがっているのだろうか。
千住の猫は「普通」だった。 ネコスポットとして有名な場所のネコは、どんよりとした顔で、変に太ったり痩せたりしているのに。 ノラも飼い猫もおっとりとしていた。 声をかけても、怒るわけでも愛想をふりまくわけでもなく、「ん?」という顔でこっちを見た。