●あしたのためにその1
「荒川区役所をめざすべし」
漫画「あしたのジョ−」の冒頭、
東京のかたすみに、ある…ほんのかたすみに
ふきすさぶこがらしのためにできた
道ばたのほこりっぽいふきだまりのような
…中略…
そんな街があるのをみなさんはごぞんじだろうか?
この物語は、そんな街の一角からはじまる
〜「あしたのジョー」文庫版(講談社)第1巻より〜
天涯孤独の少年、矢吹丈はそんなドヤ(簡易宿泊所)街に流れつく。そこで元プロボクサーの丹下段平と出会い、泪橋の下のオンボロ小屋「丹下拳闘クラブ」でボクシングを習う。ライバルたちとの死闘を繰り返しジョーは成長していく。パンチをもらい過ぎ、パンチドランカーになりながらも最後には世界チャンピオンに挑戦。真白になるまで燃え尽きる。
作者ちばてつや氏がこの物語の舞台としてイメージをつかむため訪れた場所がある。荒川区と台東区にまたがって簡易宿泊所が分布する山谷地域だ。そこには以前まで泪橋という橋が実在していたが都市開発のためなくなり「泪橋」という地名だけが残り現在は交差点になっているという。
「あしたのジョー」の舞台となった場所を見に行きたい。
日暮里駅からバスに乗り「泪橋交差点」を目指す。
バスの中は高齢の方の姿が目立つ。車内に流れるアナウンスも
「荒川警察署からお願いです。最近、高齢の方の事故が増えています。外出は明るく目立つお洒落から」
とか
「荒川消防署からお願いです。最近、住宅の火災などにより多くのお年寄りが亡くなっています」
という内容のものが多く、いきなり暗い気持ちになる。
泪橋交差点に行く前に荒川区役所で途中下車。どれ位昔に泪橋が実在していたのかを確かめにぶらり。
広報課の方に泪橋が取り壊された年代を聞くと、一番偉い人と若い女の人と中堅どこの男性がそれぞれに答えてくれた。
偉い人「ありゃ、明治時代とかそれくらいじゃないか」
女の人「いや、昭和30年代だった気がします」
中堅「前まで、僕、その資料持ってたんですけど」
偉い人「そういう資料はさ、あそこにファイリングしておかなきゃ」
中堅「いや、もういらないと思って」
偉い人「それじゃ駄目だよ。何の為のファイリングなんだよ」
泪橋がいつ取り壊されたかという事より、日々の業務体制の話になってしまった。これ以上中堅の人が責められてもいけないと思い、とりあえず情報提供コーナーで昔の写真を見せてもらう事に。
「目で見る荒川区50年のあゆみ」という本には昭和38年の泪橋近辺の写真が載っていて、その時点では既に交差点になっていた。現千葉ロッテマリーンズのかつての本拠地東京スタジアムが写っていたり、都電が走っていたりしていました。版権の関係で写真は載せられないと言われてしまいましたので、想像して下さい。
結局、泪橋はいつなくなってしまったのか、そして在りし日はどういう姿をしていたのか、有力な情報をつかめないまま再びバスに乗り泪橋交差点を目指す。
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