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2月のテーマ:愛


はっけんの水曜日
ネコだまりを訪ねて
のびーーー。

私はネコを愛してる。
小さいころ一緒に暮らしていたミーコは、ため息ばかりつくさめたネコだったが、いいやつだった。当時、彼女は明らかに、私より精神年令が上だった。だからいまだに、たいていのネコは「大人」に見える。

今、東京でアパート暮らしなので、ネコと暮らせる環境がない。近所の気のいいシマネコが遊んでくれる時もあるけれど、いつも会えるわけじゃない。
ネコ。普通のネコ。ペットショップのネコじゃない、目の座った大人のネコにあいたい。
そこで今回、ネコ出没スポットに出かけてみた。「好きなネコに囲まれて、癒されまくるぞー」と、ずうずうしく思っていた。しかし、そう都合よくはいかなかったのです。

(text by 大塚幸代


谷中、夕焼けだんだん。


ネコたち。向いてる方向がバラバラ。

彼が営業部長。やる気に満ちたネコ。


ほっといてくれニャ。

谷中のシンボル

まずは「ネコ好きの聖地」と呼ばれる、東京の下町・谷中に行ってみた。

なぜ聖地なのかというと

夏目漱石が「吾輩は猫である」を書いた家、通称「猫の家」があるから
本物の猫もいる猫グッズ専門店「ねんねこ堂」がある

から

しかし、なんといっても一番の理由は

町に猫がうろついているから

につきる。

谷中を歩いていると、どこかの飼い猫の散歩によく出くわす。猫を飼うにも、散歩に出すにもいい環境なんだろう。

家のないネコも多い。
「夕焼けだんだん」と呼ばれる石段には、つねにフリー(ノラ)の猫がいっぱいいるので有名だ。

つまり、猫撮りカメラマンのみなさんにとって、恰好の撮影スポットでもあるわけだ。

この日(2月22日、ニャンニャンニャンで、なんとネコの日)も、夕焼けだんだんには10匹ほどのネコがいた。

周辺はネコの匂い。
有志の人が置いたのか、エサがあちこちに置いてある。ネコもみな小太りだ。

ネコたちは集まっているくせに、てんでバラバラな方向を向いて、静かに座っていた。
何もかも悟ったような顔をしていた。
でも実際は、「さむいなー」「うまいもの食いたいなー」としか考えてないのかもしれない。

ネコとたわむる

今回、私はネコへの対話のきっかけにと、猫用ジャーキーを持ってきていた。
「どうも、こんにちわ。チチチチ」
ネコはあっっさり近寄ってきた。ジャーキーの匂いをクンクンとかぐ。
なめる。
食べない。
「これ、あんまり、高級なヤツじゃないね……悪いけどいま、おなか一杯なんで」
という感じで、元に座っていた位置に戻っていった。

しかし一匹だけ、愛想のいいシマネコが相手をしてくれた。すり寄ってきて、ジャーキーも少しは食べてくれた。「営業部長」と名付ける。

通りは観光客がひっきりなしに通る。「うわあ、ネコだ可愛いー」と声をあげる。
立ち止まる人に、ネコのほとんどは無関心だ。
営業部長だけ
「どうも、谷中名物のネコなんですよコレが! 街のシンボルなんでね、大切にされてるんですよね、割と」
という感じで、グリグリと身体を押し付けていた。

「ねんねこ堂」にも寄った。
ねんねこ堂のねこは、店の中のストーブの前にねそべっていた。毛並みも毛ヅヤも、夕焼けだんだんのネコとは、同じ動物とは思えないほどきれいで、
「愛されてるネコー!」
というオーラが、全身からほとばしっていた。



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