●20:00「まずは1杯目。僕のイメージでお願いします」
1軒目。渋谷宮益坂にバー「LARGO」はある。壁一面に並んだお酒の瓶に迎えられ、口ヒゲをはやしたバーテンの石原さんにカクテルを注文。
「僕たちのイメージでカクテルを作ってください」
「分りました」
見た事ないようなお酒のビンを何本か取り出し、氷りを砕く。シャカシャカ、シェイカーを振る音。僕と林さんは固唾を飲んでバーテンダー石原さんの動作を見守る。
数分後、2つのどっしりとしたグラスに注がれたカクテルがカウンターの上に並ぶ。
「お2人とも食後だと思いましたので、ハードリキュールベースで作ってみました」
「……」
2人とも空きっ腹だ。
いきなり間違ったイメージ。大丈夫なのか?
「まずは住さんの方ですが、カルバトスというりんごのブランデーベースで作ってみました。オリジナルカクテルです」
■住のイメージカクテルその1「カルバトスベース」
カルバトスというお酒はフランスはノルマンディ地方で取れる林檎から作られるハードリキュール。
「林檎しか取れないような荒廃した土地なんですが、そこに野性味があるんです」
「野性味ですか!僕のイメージは野性ですか?」
「はい。更にこのお酒は寝かせると熟成してどんどん旨味が増していくのです」
まず出て来た僕のイメージが「野性味」だった。今までの人生で野性っぽい、って言われた事は一度もない。意外なイメージに少し喜ぶ。
「次に林さんのカクテルですが、クウァントロというハードリキュールをベースにしております」
林さんのイメージは「黄色」だったらしい。僕の「野性」よりはイメージに合っているように思う。
■林のイメージカクテルその1「クウァントロベース」
どちらのカクテルも1杯目にしていきなり強い。僕たちは食後ではない、って一言言えば良かったのだがそういう事を言える雰囲気ではない。バーテンダー石原さんのプライドを傷付けてしまってはいけない。
空きっ腹に40度のアルコールを流し込む。
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