●かりん、レモン酒

「こっちにも果実酒あるじゃん、果実酒だらけだなあ」
「あ、それはわたしが漬けたのよ」
「いつ漬けたんだろう？　このかりんは、92年って紙が貼ってあるけど。10年前か。こっちのレモンは？」
「8年くらい前かしらねえ。わからないわあ。この家に越してからだと思うけど」
「ここに越したのは、15年前だよ」
「………」
「………かりんのお酒、全然減ってないけど」
「飲んだことないもの」
「漬けただけで、満足したんでしょう」
「そうね」
「そうね、って………飲んでみよっと。（ごく）……甘いわ。アルコールっぽい味はしないよ、ただひたすらに甘い」
「かりんって、すっごく甘い匂いがするものねえ」
「レモンのほう食べてみよっと」

「（ぱく）……あ、このレモン、梅酒の梅と同じ味がする」
「あら、ほんとだわ。美味しい」
「なんで梅と同じ味なの？」
「さあねえ」
「………」