店頭に置いてある椅子に座り、飲んでみる。
ごく。
………米のつぶが少なくて、サラリとしていた。
すこし砂糖の味がした。それがダメと言うわけじゃなくて、天野屋の重厚な甘酒よりも、飲みやすくて良いと思った。
3分の1飲んだところで、込み上げてくるものがあった。
うう………吐きそうだ。しかし捨てるところがない。
気分を変えて、歩きながら飲もう、とコップを持って甘酒横町を歩く。もし捨てられる場所があったら捨ててしまおう、という魂胆もあった。
でも、甘酒横町の植え込みは、どこもキレイだった。甘酒を捨てるようなスキはなかった。
周辺をぐるっと一周歩いて、戻ってきて、もう仕方がない、胃に流し込むしかない、と決めた。
息を止めて飲み込む。
自分が涙目になってることが分かった。
「甘酒横町行ったら、有名なタイヤキ屋さんにも行こう」と思っていたが、そんな余裕は無くなっていた。
天野屋の前まで戻ると、店内のガンモ、ゆば、豆腐が、なぜか輝いて見えた。醤油をかけて食べるようなものが、すべて美味しそうに見える………。
さて、次は浅草だ。果たしてもう1杯飲むことは出来るんだろうか?
|