冠婚葬祭など大事な時に限って襲ってくる「足のしびれ」。RPGによく出る麻痺の魔法をリアルにやったらあんな感じなのではないだろうか。しかし頻繁に出会う事態でありながら、しびれ中はヒー!としびれの度合いを口に出して紛らわす程度の事しかしていない。
では、その刺激は一体どの程度なのか?そしてしびれによって運動能力はどのくらいダウンするのか?なお実験の都合上、小汚い足が何度か登場することを先にお詫びいたします。
(text by 大坪 ケムタ)
足のしびれvs熱さ・冷たさ
よく正座した時に足をしびれさせない方法として「親指を交互に入れ替える」とか言うけれど、逆に「足がしびれた時の対処法」というのはあまり聞かない。刺激には刺激、ショック療法で意外としびれが退いたりするかもしれない。手近な刺激というと熱さ・冷たさ。しびれ状態にこの辺で喝を入れてみる。
まずは実験に際して足をビリビリしびれさせることが必要。とりあえず普段はデスクで仕事しているけれど、今日だけは正座で仕事をすることに。
そして30分後。きたよ、きましたよ。ピリっとくるヤツが。足を伸ばすと一瞬の爽快感。そしてその直後にかゆみとも痛みともつかぬ感覚が襲ってくる。正座を解いたあと、あまりのしびれに立つことが出来ず、ひっくりかえって「うわー、立てねぇ!さ、触らないで!」という状態がAクラスだとすると今の状態はCクラス、独立歩行は出来るが触られるとキーンときそうな感覚。
まずは氷を足先にあててみる。
用意していた氷をポテとあててみると、お…。全体はじわーんとしびれてるのに関わらず、氷周辺だけは冷たさの刺激が優先してるような気がする。全体がピリピリ来てる中で一カ所だけヒヤーっとしている。むしろ普通に氷を足の裏にあてたら冷たさにヒー!となるが、しびれがある分程良い冷たさを感じとることが出来る、ような気がする。
続いて温感チェック、でもその前に再び正座30分。そしてしびれが溜まってきたところで、足を崩して今度はカイロをあてる。
…ん、さっきの氷ほどではないけれど、やっぱり熱を帯びてる部分だけしびれが多少軽減してる気がする。現時点では氷>カイロ>しびれ。意外と弱いぞ、足のしびれ。
ここまで導かれた結果は「温度の刺激はしびれを凌駕する」。とはいえ、まだワンポイントの刺激しか与えていない。ならば実験としてもう一段階進める必要があろう。再び正座30分。第二実験場に向かう。
氷・カイロはワンポイントだけの温度差だったけど、ではしびれてる足全体に温度差を与えてみてはどうか?と熱湯を張った風呂にしびれる足を突っ込んでみるのだ。
ビリビリくる足を湯船に突っ込むと…わ、なんか変な感じがする!
熱めのお風呂に入ると、肌を刺すようなピリピリした感覚を覚えることがないだろうか?アレとしびれのピリピリがダブルで来る感じ。といって特別熱い湯ではなかったので、耐えれない感じではない。
例えて言うならコレはアレだ、「電気風呂」。たまにスーパー銭湯とかにあったりする、肌がなんだか静電気みたいな感覚でチクチクする湯船。ともかく妙な感覚が足全体にまとわりついた感じ、これは心地よいかも…。しびれと熱湯、意外な相乗効果を確認!
しびれでどのくらい運動能力はダウンするのか
足のしびれで一番問題になるのは「運動能力の低下」。しびれ過ぎると立てなくなるのはご存じの通りだけれど、そこをあえて無理矢理立って活動したい。その調査法としては、一定の距離を走って、通常の状態のタイムとしびれた状態のタイムを比較しようというもの。まずは基準となるタイムを計測。
それにしても、土の上にゴザ一枚ひいて正座をしてみて分かるのは、しびれ度の違い。温度差の実験は自宅のフローリング上・マット上でやったのだけど、仕事に集中してたからか、それとも床の堅さ・柔らかさに難儀したからか、もともと足がしびれやすい自分にしては意外とビリビリ来なかった。
しかし、ほどよく柔らかく硬い芝生の上だと15分でいい感じにシビれが来たよ!後ろから足先を触られても気づかなかったほど。こりゃ足解いた瞬間Aクラスのしびれが来ること必至。やはりシチュエーションは大事です。
そして30分後、正座から足を解き放ちダッシュ!とはいえしびれが足の自由を削り取る。しかし全身がヒーとなる前に靴を履いて土を踏みしめろ!
たしかに足はしびれているが、走ってしまえば意志の力はしびれより強し!結果は19秒08。足がしびれて4秒弱ならそれほど差はないなぁ…。
と、思ったところに、しびれの第二波がキた!そうだ、足のしびれって正座を解いた直後時よりも、ちょっと時間が経った頃の方がガッチリ来るんだよな…うわぁ、足全体がシンバル鳴らしたあとの「シャァァァァ…ン」って震動してる状態だ!ともかくしびれが足にキてる内に測定するべく、再びゴールからスタートに向けてダッシュ。その結果が
第二波のしびれの衝撃はすさまじく、走りたくとも勢いがつかない。最初走った時は意志の力で押さえ込んだしびれが、逆襲のように足に走りダッシュできねー!
最初は「走るぞー!」と気合いを入れてた分、足のしびれは克服出来た。しかし一度気を許した瞬間、頭に取り憑いてきたしびれの刺激。まるで「13日の金曜日」のラストみたいだ。
痛覚無し。この状態を何かに使えないものか。
まだ人類は本当のしびれを知らない
日常に多々襲われる事態でありながら、その全容は知られてないというかわざわざ知ろうとしない足のしびれ。今回走ったり、お湯につけたりしてその知られざるポテンシャルの氷山の一角を知ることが出来たような気がする。もっと長時間しびれっ放しなら、他にもいろいろ実験してみたいんだけどなぁ。
他にも日常の中にある様々な麻痺的状態。「起きたら腕がしびれる」「足がつる」など様々な状態にもチャレンジしていきたいと思います。