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コネタ


コネタ1070
 
ビール瓶を手刀で割る

これをこの手で割りたい

 「強そうに見られること」は重要だ。実際、普通の人よりは明らかに強い格闘家であっても、試合に負け続けると「弱い」と言われてしまう。

 だから逆も同じことで、実際弱い人間でも、なんだか強そうなことをすると強そうに見られる。実際に強くなる必然性はもう無い。

 さて、ビール瓶を手刀(チョップ)で割ったら、きっと強い人かのような目で見られることは間違いない。

 その為にも、ビンを手刀で割るためだけのコツを探してみたいと思います。

(text by 藤原 浩一

とりあえず、やる。

 とりあえずやってみることにした。世の中には何枚もの瓦を一撃の下に割ってしまう人もいるというのに、ビール瓶1本ごとき、なんだ、ということだ。

 もしかしたら案外簡単にできてしまうかもしれない。そうじゃないかもしれない。


はああ…!!

 

がー!!!!

 

!!!!!!!!!!!!!!!

 結果 :痛いし、割れない。分かってたけど。

ビン曰く、「この程度で割れるはずないだろ」

 何回かやってみたが、一向に割れる気配を見せない。右手の側面がものすごく痛くなっただけだ。

 日本人は農耕民族であり、ビール瓶割り民族ではないのだから当然の結果といえる。

 それ以前に、この程度で割れてしまうのならば、世界中のビール瓶がケースで運ぶ過程で割れている。そして今頃道路はビールであふれてる。家がビールびたしになっちゃう。ソーセージでせき止めなくちゃ! 最高にもったいない話だ。


  では、どうするのか。このままでは、当たり前のことを「当たり前の結果になりました」として終わってしまうことになる。

 そういうわけにもいかない。


小学生も興味津々。

 どうしたものかと、チョップを繰り返していたら、曰く「忍者ごっこ」をしていた小学生たちが集まってきた。

 やろうとしていることがやろうとしていることなので、 「これからビンが粉砕される予定だから、近寄るんじゃないんだってばよ」と優しく注意しておく。これはこどもの遊びではない。大人の遊びなのだ。

 

こうすりゃいいのでは

 手が柔らかくて、繰り出すチョップもヘロヘロなのが問題だ。

 ハンマーのような硬くて重いものをぶつければ、間違いなくビンは割れる。だが、もちろんそんなことをしたら、今回のコンセプトである「手刀(チョップ)で割る」に反する。

 うーん、ならビン同士をぶつければいいのでは?


このあたりをべしっと叩くと、
ビンの口がごちんとぶつかる。そして割れる?

 ビン同士の硬さを利用してやるのだ。

 これならコンセプトにも反していないし、1本だけを割るより2本を一気に割るほうがなんか凄い気もする。

 そういうわけで、早速やってみた。


> みてみる <


 割れた。割れたというか、粉砕した。 こどもが出てきた。止めた。

 それにしても怖いくらいにコナゴナだ。右手にビンが当たるような感覚も少ししかなく、いとも簡単に割ることができた。潜在能力が覚醒した? いやいや、そんなことはない。チョップの軌道は前と一緒でヘロヘロ。

 あまりの手ごたえの無さに、「指一本でもいけるかも…?」とか思う。必要以上に凄いことしちゃった感覚がして、うまく状況を受け止められない。す、すごい。

 いきなりこれやったら、なんだか凄く強い人扱いされますよね。対戦相手として本気で強い人が出てきたらすぐやられますけど。

 

が、状況を確認すると…。

 思ったより粉々になったので、細かいかけらが用意したシートから大分はみ出してしまいました。公園にいたのは上に出てきた小学生たちだけで、安全には配慮したので誰かにかけらが当たる危険は無かったのですが。

 数ミリ程度の細かいかけらまですべて回収しましたが、その為に当然長い時間がかかりました。

 それにチョップをした右手に切り傷がいくつかできました。

 危険なのでよい子は真似しないよう、宜しくお願いいたします。


こんなことになるなんて・・・

二本のビンの訓え

 「三本の矢の訓え」というものがある。1本では容易く折られてしまう矢でも、3本に束ねると強度が増し大きな力にも耐えることができる、という毛利元就の教訓である。

 今回のコネタで、1本では絶対に手刀で割ることのできない強度を持つビール瓶でも、2本並べると互いがぶつかり合いヘロヘロチョップでも粉砕できてしまう、ということが分かった。 「三本の矢の訓え」と正反対の教訓になってしまったわけだ。

 硬いビンと言えども、同じものがぶつかるといとも簡単に破壊されてしまう。強いヤツは壊れやすいのだ、弱くてよかった。この経験を「二本のビンの訓え」として後世に広めていこうかと思ったり思わなかったりする今日この頃だ。

その経験の代償が無いわけでもない。

 

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