おいしくいただきます
レシピには、料理の作り方が書いてある。しかしなぜそうするのかは書かれないことが多い。
生地をこねた後、一晩寝かせるのはなぜか。 調味料はなぜ砂糖から順にくわえるのか。
たぶんそれらは常識なんだ。だから、細かい理由まではいちいち書かれないんだと思う。
でもぼくにはさっぱり分からない。だから、あえてレシピと違うことをすることによって、逆にその工程の理由をさぐってみることにした。
(text by 三土たつお)
クッキーの生地を寝かさないで作ろう
というわけで今回は、お菓子やうどんなど、小麦粉をこねて生地をつくったあとの工程でみかける「この後しばらく寝かせます」という手順の理由をさぐることにしよう。
寝かせろ寝かせろというけれど、じゃあ寝かさなかったらどうなるのか。じっさいにクッキーでためしてみました。
クッキーのレシピをダイジェストで
探してきたレシピをもとにクッキーをつくる。まずはとにかく材料をあわせてかき混ぜるのだ。
卵や
そうしてできた生地がこちら。
手元のレシピによると、この生地をこのあと冷蔵庫で1時間寝かせることになっている。しかしその理由はかかれていない。
こどものころは、理由のわからないことであっても、いわれたことには従っていた。舌を抜かれるといわれれば、ウソをつくのをやめようとおもった。
でもぼくは大人になった。理由の分からないことには従いたくない。
だから、この生地は寝かせない。
というわけで、このままレシピの手順をすすむ。
ところが、丸めた生地をクッキーの大きさに切る段階でさっそくバチがあたったようだ。やわらかくて切りにくい。
しかしそれがなんだというのだ。手でちぎって丸め、ふたたび平らに整形すればいいだけのこと。なんの問題もない。
焼いてみた
生地をオーブンに入れ、150℃の熱で焼いていく。
バターと砂糖の甘い香りがひっきりになしに漏れてくるオーブンの前で待つこと20分、クッキーがきつね色に焼きあがってきた。
見た目は文句なく普通のクッキーだ。
「じつはこいつ寝てないんだぜ」なんてことは、たぶん言わないとわからない。しかし肝心の味はどうだろう。
味はどうか
食べてみた。結論からいうと、ふつうだった。
いやいや、たぶん本当は何かが足りないんだろう。食べる人が食べれば分かるはずだ。でも、自分でつくったというひいきめもあってか、ふつうにおいしく感じる。
というわけで、急遽、ふつうに冷蔵庫で1時間寝かせた生地でもあらためて焼いてみた。
味を慎重にくらべみる。
・・・。
ちょっとだけクッキーがパリっと焼けている気がする。でもそれは焼き時間の違いなのかもしれない。
うーむ。もっと寝かせれば、違いもより分かるのかもしれませんが・・。
ごめんなさい、失敗でした
もくろみとしては、
・工程の差によってこんなにも味が違う ・だからやっぱり必要なんだ
となることを狙っていたのだけど、あえなく「違いが分からない」という結果になってしまった。
料理下手の味オンチがやる企画ではなかったのでしょうか・・。く、くやしい。