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コネタ343
 
タヌキに会いに空港に行く
タヌキが横断するという滑走路

年末といえば、タヌキ。
大晦日の夜、うっかり眠ってしまった坊さんの代わりに除夜の鐘をついてくれたり、家族が集まる囲炉裏の上で鉄瓶の形をして火にかけられたりと、何かと大活躍のタヌキ。

ところで、長崎空港にはタヌキが出るらしい。
空港なのにタヌキが出る。

その不思議な光景を見に行ってきました。 

T・斎藤

「狸にエサを与えないで!!」

狸にエサを与えないで!

長崎空港に到着してまず最初に目に飛び込んでくる看板がコレ(左の写真)。

「狸はエサを求めて滑走路を横断して来ます。航空機の安全運航に支障が生じますので、エサを与えないでください。 」

ぐはっ!!

テロリストを警戒しておりますとか、そういうのではなく、まず第一の注意事項が「狸にエサを与えないでください」。


空港と陸地を結ぶ橋

海に浮かぶ空港

長崎空港は、陸岸から1km離れた海上にある。なんでも世界初の海上空港だったんだとか。

同じ海上空港でも関西国際空港が埋め立てによる完全な人口島であるのに対し、長崎空港は、箕島という周囲7kmの小島を改造して作られている。箕島にはかつて13世帯66人が住んでいた。長崎空港に出没するというタヌキも、おそらくその時代からの生き残りであろう。


地方の空港はこんなもんです
この金網の向こうにいるんだろうか?

タヌキを求めて…

あんな看板があるくらいだから、そのへんにいるんだろう。タヌキの姿を求めて、空港周辺をウロウロと探して歩いた。

が、影も形も見当たらない。

しばらく歩き回っていたのだが、一般客ならおよそ用が無いだろうと思われるフェンス周辺をキョロキョロしている姿はかなり挙動不審だ。佐世保バーガーの時のように、また捕まってしまうかも。

もしかしたら食料をチラつかせたら出てくるのかもしれないとも思ったが、それこそ
「エサはやらんでくれんね!」
と、空港の人に長崎弁で怒られそうだ。なにしろ、空港としてはタヌキのエサはテロリストよりも警戒しているのだ。

ということで、一旦断念して家に帰った。



そして飛行機は飛ぶ


夜の空港へと高速を飛ばす

やつらは夜行性だ

家に帰ってから、ネットにつなぎ地元民からのタヌキの目撃情報を募る。すると、早速
・夜行くとウロチョロしている。
・2、3日前に見た。
といった有力情報を次々と入手。

そうか!やつらは夜行性だったのだ。

その日の夜、私は再び空港へと車を飛ばした。空港までは市の中心部から高速を使って約30分。待ってろよ、タヌキたち。


夜の長崎空港
フラッシュは手前の道路を照らすのみ

がしかし、昼間でも怪しかったのに、夜中に空港敷地内をウロウロするのは怪しすぎないだろうか?
それに、空港という広いフィールドに対し、ターゲットであるやつらは小さすぎる。果たして見つけられるだろうか?

いろいろな思いを胸に、夜の長崎空港に到着。

いた!! がしかし問題発生

空港に入るやいなや、心配とは裏腹に、タヌキはすぐ見つかった。道路の真ん中をウロチョロしていたのだ。まさにタヌキ、というシルエットが闇に浮かんでいた。

タヌキはとてもかわいかった。さっそく写真に収めようとして、そこで問題発生。
夜なので暗くて写真がうまく撮れないのだ。

近づくと逃げてしまう。
かといって遠くからではフラッシュの光が届かない。 私のチンケなデジカメではいかんせん力不足だ。 困った。


謎の車が現れ、そして…

謎の車登場

しばらくいろいろ試していたがうまく撮れず、万策尽きてそろそろ帰ろうかと思っていた頃、一台の車が、例の看板の前に来て路駐した。
すると…

なんと、タヌキが草むらからワラワラと出て来たではないか。ひょっとしてあれは夜な夜なエサをやりに来ている車なのか?あの車の主がここのタヌキの生活を影で支えているのか…?
いや、よく見るとそうでもないようだ。

はっ! わかったぞ!



パブロフのたぬき

まるでゼルダの伝説の謎が解けたような気分。
で、撮れた写真がこれ。


出てきた、出てきた。これが長崎空港のタヌキ。

パブロフの犬がベルを鳴らすと条件反射でよだれを垂らすように、長崎空港のタヌキは夜中に路駐する車がいると、エサをくれる人かと思って出てくるのだ。

で、先ほどの謎の車と同じ位置に停めて撮ったのが上の写真。ちなみにフラッシュは使わず、露光時間を長くして撮影した。
この時、反対側にもさらに何匹かいて、ちょうどタヌキに車が囲まれるような状態になっていた。
(サファリパークかよ、って思った。)


今年は暖冬とはいえ、野生の動物にとって冬は生き残りをかけた厳しい季節であろう。

個人的には私もガンガン餌をやってタヌキを応援したい気持ちだが、空港職員の言い分もあるだろうし、そのせいで飛行機が着陸できなくなるのも困るので、エサはやらずにタヌキたちに別れを告げた。

しかしそれにしても、想像以上の数のタヌキ達だった。
いっそのこと、さらに数を増やして観光名物にしてしまえばいいのに、とか思った。

今年の大晦日は、彼らはどこで
除夜の鐘をついてくれるだろうか?


 

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