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コネタ304
 
食えるクリスマスリースを作る

 12月に入ると、いくら暖かい沖縄でも街にクリスマスのデコレーションが溢れ始める。そんなクリスマスムードを家庭でも味わいたい場合に最も手軽なアイテムといえばクリスマスリースだ。しかしこのリースが意外とくせもので、変に気合の入ったのを買ってしまうとクリスマスを過ぎてももったいなくて捨てられない。さてどうしよう。

そうだ、もったいないから食べちゃおう。

という単純な発想から、実際に食べられるクリスマスリースを作ることにしました。

安藤 昌教

お店にはリースが溢れています

まずは偵察

食えるリースを作る、と宣言してはみたものの、筆者は実はクリスマスリースというものを一度も作ったことがない。以前住んでいた家の近所には巨大なリースの飾られた家があったのを覚えているが、とにかく大きかったという記憶しかなく、具体的にどんなものなのか思い出すことができない。

ということでまずは売られているリースとはどういうものなのかを偵察することに。大型スーパーのクリスマスグッズ売り場にはそれはもうあるわあるわ、所狭しとリースが売られていた。それぞれのリースにはなんとなく個性があるが、大きくまるめるとポイントはこんな感じだと思う。

・輪であること
・色は緑と赤のクリスマスカラー
・付属品は金色で豪華に

食べられる食材でこれに準じたリースを作ればよいわけだ。3つのポイントを頭に入れて材料を買いに行った。


うまそうなものばかりが目に入ります

材料の買出し

食える、というくらいだからやっぱり買出しはスーパーだろう。先ほど決めたポイントに沿ってリースの材料を選ぶ。今回はスーパーのエキスパート、妻にも同行してもらった。あまり考えずにばんばんカゴに食材を入れようとする筆者に妻が歯止めをかけてくれる。

「ちょっと、何に使うのよそれ」
「いや、うまそう、かなと思って」

妻に同行してもらってよかった。筆者一人で行っていたらたぶんに鍋になっていた。


およそリースの材料とは思えないラインナップ

ということで集めた材料がこれ。筆者的にはかなり無難にまとまっていると思ったのだが、逆に無難すぎて企画としてボツらないか不安だった。

それにしても「「クリスマスの雰囲気をかもし出すためには必須だ」と必死で主張して買ったオクラだが、こうやって記事をまとめながら冷静に考えると、どういうことなのかさっぱり意味がわからない。僕はなぜあんなにオクラに執着したのだろうか。特にクリスマスっぽくもないし。まあたぶん単に自分が食べたかっただけなのだろう。

まっすぐに育ったごぼうをわざわざ丸めます

早速製作に入ります

それでは早速製作に入りたいと思う。。まずはリースの第一ポイント「輪であること」から満たしていきたい。これはリースの土台となるので慎重に材料を選んだ。その結果がごぼうだ。土台としてはしっかりしているし、食物繊維が豊富で便秘解消にも効果的だ。

ごぼうを2本まとめて針金で束ね、リースの土台となる輪を作る。丸められて輪になったごぼうはなぜだかすでにごぼうに見えなかった。ごぼうは丸めるとごぼうに見えない、思わぬところに新たな発見だ。


見事なほどにクリスマスカラー

リースがリースたる二番目のポイント。緑と赤のクリスマスカラーであること。その条件に則って今回選んだ食材がこれ、大葉と唐辛子。大葉はカロチンとカルシウムの含有率が野菜の中でもトップクラスだ。そして赤い彗星、島唐辛子。これは普通の唐辛子よりも小粒だが、その辛さは暴力的だ。これら2つの食材をこうして並べるとどうだろう、見事にクリスマスカラーではないか。栄養価も高いしちょうどいい。

ごぼうで作った土台に大葉と島唐辛子をまとめて針金で縛り付けていく。レイアウトにセンスが問われるところだが、頭の中にぼんやりと残っていた売り物のリースのイメージをたどりながら配置していった。


締め付けすぎて野菜が痛まないように慎重に作業します
我ながらセンスのよいレイアウトだと思う

オクラが入ったことでなんとなく和風になりました

次第にわけがわからなくなる

そしてここで新たな食材、にんにく登場だ。リースはたいてい玄関に飾るのでにんにくがぶら下がっているとドラキュラとかが寄ってこないかと思ったのだ。今考えるとなんでだ。またもや無駄に深読みしすぎていたことに遅れて気付く。だけどせっかくなのでにんにくにもリースの一部になってもらおう。

そして次に問題のオクラだ。筆者が食べたかっただけの理由でエントリーされた緑の野菜。まあぎりぎりクリスマスカラーなのでよしとするが、形状的にも個々にリースに参戦するには無理があると判断し麻紐でまとめてつるすことにした。


いかにもクリスマス的なチョコとマシュマロが参戦

そしてリースとしての最後のポイント、付属品は金色で豪華に、だ。これには困った。一般的に天然で金色の食材というのはなかなかないのだ。はじめみかんとか金柑とかをつるそうかと思ったが、そんなリースを玄関に飾っては隣人に「見ろよ隣の家、もう正月準備だぜ」と誤解されかねない。ということで少々姑息な感じもするが金紙で包まれたチョコレートをセレクト。雪だるまのマシュマロもついでに飾った。この二つが加わることで、一気にクリスマスムードが増した。やっぱり既製品は違う。


じゃーん。ついに完成、食えるクリスマスリース。本当に食えるよ

食えるリース、ここに完成

こちらが試行錯誤の末、ついに完成した食えるリース。ほとんどの材料は生ではいささか食べにくいが、火を通せば確実に食べられる。しかも先に決めたリースのポイントはすべて満たしている。完全に目的達成だ。なのになんだろう、この脱力感は。

しかしせっかく作ったので一度玄関に飾ろうと食えるリースを外へ持ち出した。表札の下に掲げると、すかさず北風がぴゅーと吹きつけ、大葉がべろべろにめくれた。なんだか一杯のかけそばの話を思いだした。貧乏でも子供とクリスマスくらいお祝いしたいわ、的な雰囲気がびんびん漂っている。もしくはうちは今、呪いの儀式やってます、のサインか。どちらも望むところではないので速攻で家に持ち帰った。


辛さに号泣

リースは食えなくても良い

今回のチャレンジで一つだけわかったことがある。クリスマスリースはべつに食えなくても良い、ということだ。立派なやつを買ったのならば、ちゃんと取って置いて来年も使えばいいだけの話なのだ。

しかしせっかくなので、この企画のために沖縄に来て初めて買った島唐辛子を一本食べてみた。それはもう、いや、すごかった。小さいと思ってゆだんしてバリバリと噛むと、一瞬遅れて喉の奥から鼻の穴にかけての器官がすべてやられた。涙がぼろぼろととめどなく流れ、口は麻痺したようにしばらく半開きのままだった。こんな嫌がらせのようなリースが飾ってある家にはサンタさんはたぶん来ないだろうな、と思った。

 

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