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コネタ


コネタ230
 
凍ったカレーをごはんにかける店

ネットで気になる店を見つけた。なんとその店は、凍ったカレーをごはんにかけて食べさせてくれるという。

その名も「アイスカレー」。

…これは食べてみたいと思わなきゃウソだろう。発汗に備えて服を脱いだ方がいいのか、それとも冷えを見越して脱がない方がいいのか、それさえも分からない。まさに未知なる食べ物、アイスカレー。
「食」にだけは見せる野次馬根性を発揮して、さっそく店へと向かいました。もうすぐ冬ですが、気持ちは夏です。アイスです。

高瀬 克子

新装開店ホヤホヤだった

ネットによると、住所は築地になっている。店の名前は「カレー屋Nagafuchi」。…が、該当番地に行っても店がない。「あれ?住所を写しまちがえたか?」と思い、店に電話をしてみると「移転しました」との返事が。

――そうか、ネットって古い情報もそのまま残ってるもんな、と情報を鵜呑みにした自分を反省しつつ、移転先の新橋へと移動(近くてよかった)。

盛大に迷いながらもなんとか辿り着くと、なぜか店は大量の花で埋め尽くされていた。聞けば夏にいったん店を閉め、この日はなんと新装開店2日目だという。ということは、もし先週来ていてもカレーにはありつけなかったわけだ。おもわず自分の星回りの良さに感謝。カレーの神様ありがとう。


お祝いの花に溢れた店内
どこを見てもピカピカです

メニューに載ってない

では、いよいよ念願のアイスカレーを、とメニューを見るも、なぜか「アイスカレー」が載っていない。表裏ひっくり返してもない。まさか情報はガセだったのか?


アイスのアの字もありません。お、トッピングに納豆が

「あのぅ…、アイスカレーがあるって聞いて来たんですけども」

おずおずと訪ねる私に、オーナーとおぼしき男性は無慈悲かつ丁寧にこう答えてくれた。

「ええ。でももう寒くなってきましたから、メニューから外してあるんです」

がーん。どうしよう。なに食べよう。ああ、アイスカレー以外なにも考えてなかった…。動揺する私に、オーナーは「これなんてどうですか。ちょっと変わってますよ」と、豆腐カレーを勧めてくれた。

「じゃあ、それにします」
即答したものの、落胆の色は隠せない。


大きな寄せ豆腐がごろんと入った「豆腐カレー」

だが、これが大変においしかったのだ。いろんなスパイスが複雑に絡み合ったルー(サラリ系)と、玄米ごはんが実によく合う。食べ進むうちに、どんどん汗をかく。そこへ冷たい豆腐をひとくち。…辛さで熱くなった口の中がひんやりと心地よく、微かな甘みが舌にやさしい。断じてルーに負けてない。

そして嬉しかったのが、水の横にどでーんと置かれた「キャベツ盛り放題」の容器。これがまたカレーとよく合うんです。ああ、キャベツって美味しいな、と実感する食べ方といいますか。


トンカツ屋ではない
野菜が高騰中のこの時期に、このサービス

カレーが予想以上においしかったことで、さらにアイスカレーへの想いが募ってしまった。これを凍らせたら一体どうなるんだろう。食べたい。どうしても食べたい。夏まで待てない。

「…あのですね、やっぱりアイスカレーをどうしても食べてみたいんですけど、夏以外でも食べることは出来ますか?」

言ってしまった。
オーナーは「予約さえしてくれれば大丈夫ですよ」と快諾。あああありがとうございます! しかも「わざわざすみませんねぇ」と恐縮までされてしまったが、いえいえ恐縮するのはこちらの方です、本当にわがまま言ってすみません。

 

当たり前ですが冷たいです

翌日、期待に胸を躍らせて再び新橋へ。店に入るとオーナーは私の顔を見ただけで「あ、いまお持ちしますので」と奥で支度をしはじめた。「いつもの」で注文が通る客の気分ってこんなかしら、と思いながら待つことしばし。

ついに待望のアイスカレーと対面です。ばーん。


ドライカレーが程良く凍っております。そして立ちのぼる白い湯気、じゃなかった冷気

まずはひとくち。…シャリリ。
うわ、まるっきり初めての食感、そしてなんとも不思議な温度差。冷たいカレーと温かいごはんの組み合わせが新鮮すぎるほど新鮮だ。熱くないから躊躇なく口に入れられるし、スピードを維持したまま食べ進められるのが嬉しい。


霜がおりたようにキラキラと輝くルーたち

「うわー面白い、カレー食べてシャリって音がするよー、なんだこの歯触り、ヘンだよー、でもウマイなー、全然水っぽくないのがスゴイよ、辛さより甘みを感じる、あぁ止まらない」と、独り言を脳内に響かせつつバクバク食べていると、オーナーに「どうですか?」と声をかけられた。

「いやー、おもしろいです!」

カレーを評して「おもしろい」という感想もないとは思うが、やっぱりおもしろい。すぐに「あ、予想以上においしいです」とも付け加えたが、とってつけたように聞こえてしまっただろうか。いやでも、本当においしいですよ。

 

チャレンジャーです

「凍らせてストックしてるルーがあるんですが、指についたのを舐めてみたら案外おいしくて。これはイケルかな?と」

アイスカレーの開発秘話を聞いたところ、返ってきた答えがコレだった。実際にそれで商品化してしまうところがすごい。新しいメニューの開発にも力を注いでいて、いままで様々な食材を試してみたという。

「今まで一番合わなかったのはマグロです。あれはやっぱり醤油つけて食べるのが一番ですね」

50歳で某有名コンピューター会社を辞めてカレー屋を始めたオーナーは、その生き方同様、カレーにおいてもチャレンジャーのようです。


「葉隠の精神ですよ」と、寺尾聡と岩城滉一を足して割ったような風貌のオーナー。さしずめカレー侍といったところでしょうか

どうやら夏期限定メニューだったアイスカレー。今回は無理を言って作ってもらいましたが、もし「私も食べてみたい!夏まで待てない!」という方がいらっしゃいましたら、事前に予約さえ入れてもらえれば作っていただけるそうです。ありがたいことです。

そういう私は次回、ハーフ&ハーフにトッピングは納豆と決めてます。ええ、近いうちにまた食べに行く気まんまんです。

「カレー屋 Nagafuchi」
  港区西新橋3-5-1
  03-5401-1271
  平日11:00〜21:00
  土曜は14:00まで 日曜定休

 
 

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