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コネタ


コネタ209
 
台風で臨時休業する店をさがす
小田急線・全線見合わせを告げる電光掲示板

商店街を歩いていたら、臨時休業を知らせる貼り紙をみつけた。

「台風のためお休みさせていただきます」

有機栽培大豆が売りのトウフ屋さんだ。
そういえば大型台風接近なんてテレビでやってったっけな……。
そんなことをぼんやり考えながら、私はのんきに大好きな歌を思い出していた。

風がふいたら遅刻して
雨がふったらお休みで
ハメハメハ ハメハメハ
ハメハメハメハメハ〜

頭の中でリフレインさせながら、軽快なリズムで家路についた。

(text by 土屋 遊

観測史上最大がやってくることを知る

トウフ屋さんを臨時休業に追い込んだ主は、どうやら『台風22号』とナンバリングされているらしい。

ヘクトパスカルも最大瞬間風速もピンとこないけれど、ニュースでは『観測史上最大』と報道しているではないか。しかも今夜にも首都圏を直撃するという。
史上最大……これは大変だ。トウフ屋さんが休むのも無理はない。

今日の商店街の様子を思い返してみた。
とりたてて変わった風ではなかったが、もしかしたら私が見過ごしていただけかもしれない。
反省の気持ちも込め、臨時休業店の貼り紙を探してみようと思った。


台風直撃は今日の9時
無視され続けた東京競馬順延のお知らせ
本当に営業するんだな……本当だな?
とっとと決断を下した閉店貼り紙第一号はこれ

事前調査へ向かう(午後2時)

くもり。体感では無風。
これから襲いかかるヘクトパスカルの気配をたしかに感じるどんよりとした空だった。

食料買いだめもしよう、雨合羽も買おう、デジカメも持っていこう、意気込んでいた私を迎えてくれたのはやっぱりいつもと変わらぬ街の顔。

「あれ?」

見慣れた風景に拍子抜けだ。駅まで足を伸ばすことにしよう。

京王線の笹塚駅に向かうと東京競馬中止のお知らせがあった。
誰一人気に留める様子もないようで、いつものように改札を抜けて足早に通り過ぎていくだけ。外出中だからみんな何も知らないのかもしれない。

『台風接近のため』
ではなくて
『史上最大の台風接近のため』
と書けばいいのに……。

よけいな加筆をしたい気分になるがそんな親切なことはしない。
ガード下を抜けると大粒の雨がボツボツと落ちてきていた。いよいよか。

買いだめに寄ったスーパーには堂々と

「深夜1時まで営業」

の文字が自慢げに光っていた。店員に閉店時間をたずねると

「通常通りに営業しますよ?」

となぜか疑問系アクセントで返答をもらう。怪訝な顔をしていた。
首都圏直撃は午後9時ごろの予定になっていたはず。

(本当に1時まで営業するんだろうな……あとで確認しにきます)

と心の中で念をおしながら帰宅。

けっきょく臨時休業店はたった一軒。有機栽培のみ。

もしかしたらトウフ屋さんと私だけが世間に騙されているのではないか、そんな気がした。




雨宿りに大盛況の本屋も7時閉店を告げる
手ぶれも暴風雨のせいにできます
単刀直入型。

完全防備服で直前現地調査へ(午後5時)

大雨。暴風。

テレビもネットも慌ただしく
『首都圏に迫る』
を伝えていた。予定より進行が早いのか雨風も1分単位で激しさを増しているようだ。直撃される前に再度でかけてみることにした。

完全防備、パトロール気分で外にでた私だったが、路地を曲がるたびに暴風雨が襲いかかってきて体ごと飛ばされそうになる。

「か、かえろうかな……」

帰宅も考えたが、今を逃すと今後の状況によっては一歩の外出もできないことになる。
それはまずい。町の安全的にもまずいしデイリーポータル的にもまずい。
一歩一歩踏みしめながら商店街へ向かった。

たった三時間のあいだに街はすっかり台風に翻弄されていたようだ。風にあおられるたびに奇声をあげる女子がいて雰囲気を盛り上げてくれている。
まだ直撃前だというのにこの状況、恐るべし台風22号。

それでもこの時点で閉店していた店はたったの二軒だ。シャッターをほとんど閉めてもなお営業を続ける商売熱心な店もある。

台風もすごいが街のパワーもすごかった。
でも台風はこれからが本番なのだ……。


5時半頃の駅前。タクシーを待つ長蛇の列。
やけくそ気味な店頭グッズ(ずぶ濡れ)
2分の1、営業中のカメラ屋さん
3分の1、営業中の電気屋さん



台風は何処へ……(午後7時)

くもり。無風。
台風22号が私の頭上を通り過ぎていたことに気づき愕然とした夜7時。
三軒の貼り紙をカメラに収めただけで、期せずして私は実況リポートをしたことになっていた。
サンダルをひっかけて再度家を出た。

そして私は今さらながら『臨時閉店の貼り紙』を多数目撃することとなったのだが台風通過後の台風警戒ははたして対策と言えるのか。

大きな課題を残してくれた貼り紙コレクション、どうぞご覧下さい。


もっとも多かったのが7時閉店。個人的観測では6時半には台風去っていた模様。




コネタ追加・哀愁のビニール傘コレクション

あのスーパーは何事もなかったように営業を続けていた。
疑問系店員の予言は正しかったのだろう。
しかしすでにごじまんの深夜1時看板は片づけられていて、カサ捨てスペースになっているようだ。


勝ったのか負けたのかよくわからない光景だ

甲州街道をはさんだ反対側では『作業中』と書かれた車からおじさんが素早く降りてくるところを目撃。道路沿いに散乱するビニール傘を瞬時に荷台に投げ込んでまた車に乗りこんでいた。

行政の対応だろう、台風の残した物を点検してまわっているようだがどちらで鍛えあげておられるのか、みごとな瞬発力をフルに生かしその間およそ5秒。

あわててデジカメを取りだしたが間に合わないほど早業だ。

たしかにビニール傘の無惨な姿はあちこちで目にとまる。
なんとなく同志を讃える気分で、おじさんが街の傘という傘を一掃してしまう前に彼らの全てをカメラにおさめることにした。

ビニール傘もおじさんも、台風の真っ最中に突進するように帰路に向かった商店街の人々も、マヌケな時間に閉店決定を下した店主たちも、みなさん、本当におつかれさまでした。
みんな複雑だよね。


勇敢に戦った哀愁のビニール傘たち。人目をさけて寄り添うように佇む傘カップルを目撃



期せずして学んだこと:

今回学んだことは以下の三点

・100円ショップのレインコートでもないよりいい
・傘はないほうがいい場合も、ある
・外出は控えましょう


史上最大通過後、まだまだ警戒中のネコ

 

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