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コネタ


コネタ154
 
好き好き錯綜地

地図を眺めながらビールを飲むのが好きです


千葉の地図を眺めていたら流山市に奇妙な表記を見つけた。

「錯綜地のため大字界を省略しています。」

錯綜地?ただごとならぬ響きだ。錯綜地、カオスのにおいがする。混乱、無秩序、入り乱れる。そんな場所が千葉に。

錯綜地に行ってみることにした。(林 雄司


駅を降りて錯綜地に向かう。
マウスオーバーで飛び地が見えます
このガソリンスタンドの左が町の境界である。(マウスオーバーでわかります)
別の意味で錯綜したゴミ捨て場

最初にタネあかし

とはいうものの、出かける前に調べたら、要は町の境目がぐっちゃぐちゃになっているところのことなのだ。錯綜地。

マピオンの地図がわかりやすいのでリンクしておきます。クリック! パッチワークみたいな土地である。

錯綜の名前の謎はとけたが、錯綜地への思いはいっそう高まった。地図に載ってない町を見にいこう。

 

最初の錯綜から

東武野田線 初石駅を降りて錯綜地に向かう。歩くこと15分。最初の錯綜ポイントに到着した。この原っぱのなかに2ヶ所だけ別の町がある。ここの地名は「桐ヶ谷」なのだが、ふたつ「上貝塚」の飛び地があるのだ。

僕はいま錯綜地に来た。錯綜の現場を目の当たりにしているのだ。ドラマチックな思いで自分を盛り上げる。

………が、感想はない。

要はただの原っぱだもんなー、と思いながら次の錯綜ポイントへ。

ガソリンスタンドで住所を聞く。ここは上貝塚だと教えてくれた。道に迷っているのだと思われて

「どこに行くんですか?」

と聞かれた。

「ええ、錯綜地まで」

と答えられるはずもなく、「いや、あの、えへへ」と半笑いでこたえた。

名前だけしか書いてない表札

住所が書いてない

境界を歩いているうちに面白いことに気づいた。家の表札に住所が書いてないのだ。住所表示のプレートもない。

隣どうしの家なのに町名が違う、とかそんな写真を撮ろうとしたのだが、表札に名前しか書いてない。もしくは表札がかかっていない。

住所なんて関係なく、「XXさんち」でじゅうぶんなのかもしれない。か、たまたまかもしれない。

ここも会社名のみ
ここもだ

植えてあるものが違う畑。その秘密は!(マウスオーバー、クリックでかわります)
奥の方だけ妙に草ぼうぼう。なぜならば町が違うから。(マウスオーバーでわかります)


だんだん見えてきた

錯綜地を歩いているうちにだんだん境界が見えるようになってきた。その理由は

錯綜地はもともと地主が持っていた土地の境界がそのま残されている。

(きっと)いまでも管理している人が違う。

土地の使われかたが違う。

ひと続きの畑なのに、手前はなにかを刈り取って土が出ていて、奥にはコスモスが咲いているところがあった。これは?と思って調べるとそこが境界だったのだ。

見えたっす。ここ境界線っすよ。後輩口調になるぐらい嬉しいが取材はひとりだ。

錯綜地、思ったより規律がある。

境界ハンティングの興奮が伝われば幸いです。

 

この家が境界を変更させている。地主?(マウスオーバーでわかります)
不自然な三角形の空地。なぜならば!(マウスオーバーでわかります)

好き好き錯綜地

地図を持って歩くのが静かなブームだ。江戸を歩いたり、廃線あとを歩いたり。僕の場合は錯綜地だが。

地名や境界の由来となった歴史を考えながら歩くと地理と歴史が交差してセンター試験の選択科目みたいな気持ちだ。どきどきする。この週末、風のなかに秋の匂いを感じながら、錯綜してみてはいかがだろうか。

錯綜地にあったゲームセンターの名前も、この土地のメタファーになっているのかもしれない。

プリクラとUFOキャッチャーが充実してた

 

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