旧盆が近くなると夜な夜な太鼓の音が風に乗って聞こえてくるようになる。近所でエイサーの練習が行われているのだ。エイサーは先祖の霊を供養する踊りということで、本土で言う盆踊りと同じような意味合いを持つのだが、その踊りの形態は盆踊りとはまるでちがう。やぐらを囲んで周りをぐるぐると回りながら踊ったりはせず、自ら太鼓を叩き三線をかき鳴らし掛け声を張り上げて踊る。しかも集団で動きをぴったりとそろえて。それはそれは勇壮なものなのだ。今回、県内各地域のエイサーが一堂に会して沖縄全島エイサーまつりが開かれるというので張り切って行ってきました。
(安藤 昌教)
エイサーは文化です
エイサーはもともと旧盆中に行われる先祖を供養する踊りだ。もちろん今年も旧盆にあたる8月30日には県内のあちこちで踊られていた。
エイサーは今では全国的にもその名前が知られるようになり、新宿でもエイサー祭りが行われていたりする。エイサーは先祖供養のための踊りの枠を超え、今では沖縄の代表的な伝統行事としてその地位を築いているのだ。
今回の沖縄全島エイサーまつりはなんと第49回大会とのこと。歴史のあるまつりなのだ。しかし実はこのまつり、先週行われる予定だった。筆者もそのつもりで楽しみにしていたのだが、台風18号が猛烈な勢いで直撃したため延期になったのだ。エイサーまつりの延期は台風情報と共にテレビのニュース速報で伝えられた。
それから一週間なんだかはっきりしない天気が続いていたのだが、この日はうそのようにきりっと晴れ渡り、真夏のような日差しが照りつけていた。
着くやいなやうちわをもらう
会場に着くと入り口でさっそくパンフレットとうちわを頂いた。沖縄のイベントではうちわを配ることが多い。ずばり暑いからだ。おかげで筆者も今年はうちわに困ることがなかった。
エイサーで踊り子が打ち鳴らす太鼓が大会本部で売られていた。この太鼓はパーランクーと呼ばれ、三線(蛇の皮を張った三味線のような楽器)と共にエイサーにはかかせないもの。朱塗りの真っ赤な太鼓がおばちゃんの赤いTシャツと口紅にシンクロしていてた。
外野席は気持ちがいいです
まつりの開会が近くなってくると、どこからともなく踊り子達が終結し始める。今回のまつりでは15の団体が踊りを披露するとのこと。踊りは午後の2時半から夜9時まで続く。
筆者が会場に着いたのは開演の1時間位前だったのだが、スタンド席はすでに満員で整理券の配布も終わっていた。なので外野席で見ることに。はじめは外野席なんて暑くて嫌だなあとか思っていたのだが、これがまた青々とした芝生の上で気持ちがいいのだ。逆に得した気分になった。
ビールフェスタも同時開催
エイサーまつりと平行して隣の会場ではビールフェスタが行われていた。このゲートをくぐると一杯150円でビールを飲めるワンダーランドが広がっているのだ。祭りとビール、他に何が必要だろうか。悩み事なんて全て忘れる。
昼間の間はエイサーまつりとビールフェスタを行き来している人が多かった。もちろん筆者もてくてくと何度も往復した。
一方エイサーまつりの会場では
入場を前にしてテンションの上がる踊り隊のみなさん。「そろそろ並んでくださーい」と、まとめ役の人が大声を張り上げていたが、歓声にまぎれてしまっていた。
このチームは沖縄国際大学の学生を中心としたメンバー。障害のある方でも参加できるようなバリアフリーのエイサーを目指しているとのこと。彼らのほかにも女性ばかりの踊り隊がいたりして、たくさんの団体がそれぞれの特色を打ち出していた。それにしてもメンバーはみんなまぶしいくらいの笑顔で、もう楽しくってしょうがないですわといった感じなのだ。
テンションの上がる出演者とは裏腹に外野席で死んだように眠る人。言っておくが筆者ではない。この日は照りつける太陽こそ真夏のようだったが、グラウンドを吹き抜ける風には秋のにおいがして気持ちが良かった。ビールフェスタで一杯ひっかけて芝生に寝転べばそこはもう天国なのだ。
ついにエイサーまつりの開幕です
開幕と同時に次々と繰り広げられるエイサーの踊り。勇壮な太鼓と甲高い三線の旋律に合わせてリズミカルに踊る。本土の盆踊りと違ってゆるく周囲を回ったりはせず、その場できびきびと踊る踊りが多い。中には空手の形を取り入れた踊りやバック転をしたりする人もいて、盆踊りというイメージで見に来ると度肝を抜かれる。
エイサーは沖縄の民謡に合わせて踊るのだが、初心者の筆者にはその歌詞はまるで理解不能。それどころか近くにいたおじさんの話しすらリスニングできなかった。まだまだだな、と思った。
参加団体の中には外国人がたくさん参加しているチームもあった。伝統文化もグローバル化の時代なのだ。
写真を撮らせていただこうと声をかける 「キャナイテイク・・」 「オー、イイヨイイヨー、ドウモアリガットー」 余裕で日本語で返された
沖縄では基地の問題などが常に叫ばれているが、実際に沖縄にいる外国の人たちの多くは本当に沖縄のことを愛しているのだと思う。少なくても筆者にはそう感じることが多い。
エイサーまつりは夜まで続きました
まつりに出ている踊り子は若者が中心のチームが多かった。伝統文化がちゃんと若い世代にも伝わっているのだ。とても楽しそうに踊る人たちを見て純粋にいいなあ、とうらやましく思いました。来年はどこかの踊りに参加させてもらいたいものです。
こうして沖縄全島エイサーまつりは夜まで続き、最後にはどっかんどっかんと花火が打ちあがって盛大にその幕を下ろしたのでした。来年は記念すべき50回大会。ますます盛り上がることでしょう。