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コネタ


コネタ119
 
公園のなかにある、もうひとつの入口

公園の片隅に見慣れない物体が目に入った。目に入ってしまった。四方を柵で囲まれた6畳ほどのエリア。入り口はあるが、柵のなかに建造物は見あたらない。ウサギやチャボが飼われているわけでもない。

チビッコだけにしか、柵のなかにある“なにか”を見いだせないのだろうか。最近の公園はこうも哲学的か。とにかくニュータイプの遊具であるとみた。こうして私は、いつのまにか公園のなかへ入っていたわけです。

石井 直也

住宅街のなかにある公園。
夏休みも終わり静まりかえっている。
柵の入口へ向かう。


柵は意外と頑丈な構造。編み目も細かい。

ポップな赤色を取り入れることで公園に馴染んでいるように見せているが、おにいさんは騙されないぞ。あきらかに公園には不自然な重厚感だ。

入口に書かれた「たいとう」の文字は、公園の所在地、台東区の意味だろう。それにしても文字の配列が散漫だ。なにがあったんだ台東区。よ〜く見てみる。



最近の砂場事情は完全防備だった。ここの公園の砂場は、もちろんコレのみ。この環境ならば、たしかに誰からも邪魔されずとことん砂場遊びに集中できる。

しかし、現代のチビッコは本当にこのなかで砂場遊びをしているのだろうか。遊んでいるチビッコがいないこともあって、私は容易に想像できなかった。



砂場へ入ってみる


そもそも砂場に入るという行為をここまで意識したのは初めての経験に思う。しかし、これからの人生、公園の砂場へ入るのにここまで緊張することはもうない。

扉は開きっぱなしにならない構造になっている。扉が閉まる音を背に砂場を眺める。



京都、龍安寺の石庭みたいと言ったら大袈裟か。限られた空間のなかに無限の宇宙があり真理がある、なんて思ったりなんかして。遊ぶのに気がひけるほど整備された砂。砂場の砂なのに、だ。呆然と立ちつくす。

こんなに整備された砂を見たのは、幅跳びで利用する砂場以来のような気がする。

学生時代に陸上部だった私は、幅跳びをやっていた友達をふと思い出した。立川、元気かなあ。まだ跳んでるのかなあ。いま、柵に完全包囲された砂場から、数年ぶりに想われているなんて立川は想像だにしていないだろう。



なぜゆえ完全防備



公園に来る途中、たしかに犬を散歩している人たちをよく見かた。この公園も散歩コースに含まれているケースが多いのだろう。

砂場遊びにはまってるチビッコにとってはハードな環境だ。柵が設置されるのも納得できる。

子供時代、私も公園のヘビーユーザーだった。行きつけの公園も同じ環境の場所にあったなあ。もちろん柵など設置されていない。あまり深く考えるのはよそう。

結局、ニュータイプの遊具など存在しなかった。ただ、公園の代表的な遊具のひとつである砂場の常識が変化している現状には驚きだ。

しかし、なんだろう。柵に囲まれた砂場というのは、従来の柵がない砂場に訪れるよりずっと集中して自分の幼少時代を思い出した。外界をシャットアウトしたブースのなかで、子供時代に慣れ親しんだものに触れたからだろうか。

公園のなかにあるもうひとつの入口は、ノスタルジーに没頭する入口でもありました。それにしても砂場にひきこもる人って健康的なんだか不健康なんだか…。




 

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