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コネタ


コネタ114
 
「黒い、いなり寿司」を食べて思うこと

(text by 大塚 幸代



いなり寿司が好きです。コンビニでもよく「助六」を買います。
会社員だった時も、徹夜仕事をする際に、よく夜中に食べていました。あの優しい甘さで、疲れがふっとぶような気がしていました。
その当時のこと。後輩のMくんが、いなり寿司をかぶりつく私の横で、ニヤニヤ笑って言ったのです。
「大塚さ〜ん、いなり寿司なんか食べてるんですか?」
「うん、好きだから」
「あの〜、むかし、俺の友達がコンビニでバイトしてて、残りの弁当をいつも貰ってたんですけど、いなり寿司って、いっつも売れ残るから、いっつも貰ってて。だから、買って食べてる人を見るの、なんか不思議な感じッス」
「……ええ〜!?」
「いや、マジで」
「そんなに人気ないの? いなり寿司」
「らしいッスよ」

ショックでした。自分の好きなものが人気がない、というのは、非常に寂しいことでした。
それ以降、「私は捨てられる運命にあるような食べ物を、買ってんのか……」と思いつつ、ローテンションで助六を購入し続けました。

で、先日。「東京駅特集」の取材時、駅構内で、「黒いなり」なるものを発見したのです。


東日本キヨスクのお弁当屋さん、「膳まい」東京駅内のお店。

食品見本のイナリは、なるほど黒い。

しかし、「お品切れ中です」のフダが……。
「人気がないはずの、いなり寿司が売り切れ? しかも、何だか分からないけど真っ黒!? こんだけ黒いと、どんな味なんだろう? う〜ん、食べてみたい……」
そう思って、日をあらためて、東京駅に買いに行ったのです。

しかし、その日も売り切れ! 午後2時くらいに行ったのに! 他種類のお弁当は、ちゃんとあったのに!

店員さんに、「すいません、何時に来れば買えるんでしょうか?」と訊いたところ、「いつもなら、午後3時くらいまでは、あるんですけどね〜」との返事。
じゃあ早く行けばいいのだ! と、翌日、午前中に東京駅に向かって、やっと無事ゲットいたしました。4個入り、550円。



箱も黒いです。
フタを開けると、何やら説明の書いた紙が、はさみこんでありました。


むかし、江戸で「2月の初牛の祝い」というイベントがあった
それは稲荷明神がご開帳する日で、みんなで集まって「あぶらあげ」を使った料理を食べた
当時、貴重だった砂糖を使った「いなり寿司」は、その中でも人気フードであった
300年続いている老舗の割烹「八百善」でも、当時、貴重な黒砂糖を使って作った「黒いなり」は、スペシャル中のスペシャルメニューで、VIPしか食べられないものだった
そんなスゴいメニューが復活! ぜひ堪能してね!

……というような内容が書いてありました。なるほど。
紙をどかすと、いなり本体が現れてきました。

く、黒っ。
見本よりも黒い。焦げてるように黒い。黒いです。
さっそく食べてみます。味は……。


……ちょっぴり甘めの、いなり寿司の味でした。
黒砂糖独特の風味なので、黒砂糖がダメな人はダメかも。
お米部分には、ゴマがたくさん入っています。

いや、美味しかったです。美味しかったですけども。

コンビニのいなり寿司も、やっぱ美味しいのにな、どうしてアレは売れ残って、コレは売り切れるのかな? こっちのほうが、マニア向けな味なのにな……と、しみじみ思ってしまいました。

お勉強やお仕事の合間に、助六、食べてみてください。うまいですよ。


 

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