「イチゴ」はかわいい。 今はそうでもなさそうだけれど、ひと昔前は女性アイドルに好きな食べ物を聞くと「イチゴ」と答えていた気がする。確かに「ギアラ(牛の第四胃袋)」と答えられるより断然「イチゴ」の方がかわいい印象を受ける。「イチゴ」はメルヘンチックでファンタジーの香りがする食べ物なのだと思う。
知り合いの女性がイチゴ狩り行ったそうだ。 「私イチゴ好きだから」と彼女は言う。先に書いたように「私コプチャン(牛の小腸)好きだから」と言われるより断然かわいい。「イチゴ」は女性が好きな食べ物を聞かれた際に、まず第一に答えるべき食べ物な気がする。とてもいい印象を受ける。彼女のイチゴ狩りに行った、という発言も僕の中ではかなりプラスに働いたと思う。
イチゴ狩りではイチゴは食べ放題なのだそうだ。 女性がイチゴを食べる、かなりかわいい絵だと思う。僕はイチゴ狩りに出かけたことが無いのだけれど、きっとイチゴ狩りに行くと、そんなかわいい絵をたくさん見ることができるのだと思う。そう考えるとぜひイチゴ狩りに行きたくなってくる。
彼女はイチゴたくさん食べたよ、と言った。 そうか、そうか、と親が幼い子供の成長を見守るような温かい目で彼女を見た。さぞ女性がイチゴをほおばる様子はかわいいだろうと思う。彼女は「食べ放題だから食べないと損した気になるから、とにかく胃に詰め込んだ」と話す。あれ、と僕は思う。さっきまで思い浮かべていたかわいい光景が急に曇り始めた。
イチゴの味に飽きてくる、と彼女は言う。 「だから前もってポテトチップスを買い込んどいた」と続ける。「イチゴは甘いだけで塩気が無いから、ポテトチップスを食べて甘さをやわらげる。吐くほど食わないと。食べ放題だから、とにかくたくさん食べないと損だから。吐くほど食うわけよ」と彼女は言う。
「食べ放題だから〜損」はさっきも聞いたと思う。 「吐く」も2回言っている。さらに「イチゴ狩りの後、ホルモン焼きに行った。よっぽど美味いね」と彼女は言う。「よっぽど」って「イチゴ」より「ホルモン」の方が美味しいということではないか。イチゴ好きだって言ってたじゃないか!
あ〜幻想を抱いていたと叫びたくなった。 全然かわいくないではないか。とても現実的だ。確かに食べないと損だから彼女の考えは間違っていない。でも、なんだかかわいくない。札幌の時計台を初めて見た時に抱く感想と同じものを感じた。
しかし、と思う。 女の子と一緒にイチゴ狩りに行って「これを食べるとさらにイチゴが食べられるよ」とポテトチップスを差し出されたらどうだろう。たぶん好きになる。それは全然かまわない。そう考えると男はワガママないきものなのだと思う。そのワガママがかわいいのよ、と言ってくれる女性はいないだろうか。かわいいから1万あげる、とポテトチップスと一緒に諭吉を差し出してくれて、帰りにホルモン焼きをご馳走してくれる女性は。
そして、「うな玉わさび入り」はそんなワガママに答えてくれる味だった。 米と米の間に、甘い厚焼き玉子とウナギがはさまり、たっぷりのウナギのタレが口の中に幸せをもたらしてくれる。具が大きく多いのが嬉しいポイントだ。ワサビがアクセントとなり、たまらない。イチゴよりコチラの食べ放題に僕は行きたいと思った。いつまでも変わらぬ味でいて欲しいと願ってやまない、おにぎりだった。 ( 2011/02/08 21:00:00 )
|