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ココストアたぬきおにぎり

ココストアたぬきおにぎり
たぬきおにぎり ココストア 105円(最近暖かですが、連休は寒いようです)

「ウインドブレーカー」が好きだ。
まず名前がなんとも魅力だ。「ウインド」は風であり、それを壊すみたいな意味の「ブレーカー」。実にカッコいい。響きもいい。吹きつける強い風に向かって行く勇ましさを感じる。たとえば「ちゃんちゃんこ」にはそのようなカッコよさは感じない。「ウインドブレーカー」だから感じられるカッコよさなのだと思う。

もちろん名前だけではない。
どんなに冷たい風もまず通さないし、レインコート程ではないけれど雨もはじき、寒さにも強い。風にも水にも寒さにも強いのだ。なんてパーフェクトな衣類なんだと思う。またビニールっぽい生地を僕はカッコいいと思う。「ウインドブレーカー」は日常から男女問わず着られる素晴らしい衣類なのだ。

知り合いの女性と話していたら「ウインドブレーカー」の話題になった。
彼女は「むかし付き合っていた男がデートに『ウインドブレーカー』を着てきたの」と鼻息荒く言った。オシャレじゃないか! と僕は思うけれど、「本当に最悪。真っ白な『ウインドブレーカー』の上下よ」と彼女は続けた。

それは僕も確かに最悪だと思った。
僕が好きな「ウインドブレーカー」は上下ではなく「上」だけなのだ。下はどうも好きになれない。彼女もそういう考えの持ち主なのだと思い、「確かに普通上だけだよね」と僕は言った。彼女は幽霊でも見た顔で「ハイ?」と聞き返す。「それ高校の嫌な先生の格好だよね」と彼女は続けた。確かに高校の先生は秋はジャージで冬になると「ウインドブレーカー」を着ていた気がする。僕は自分の考えを180度かえて「確かに『ウインドブレーカー』を着て来るなんて最悪だ」と答えておいた。

彼女は「リンネル派」だったと思う。
「リンネル」とはファッション雑誌で、ナチュラル系の洋服がたくさん載っている。彼女がその雑誌を読んでいるのを見たことがあったし、見るからにそういうファッションをしている。ビニールっぽい見るからに人工的な生地である「ウインドブレーカー」の特集はきっと一度もその雑誌ではしていないだろう。そう考えると彼女が「ウインドブレーカー」を着てきた男を最悪と言った理由も分かる。

さらに考えると女性は「ウインドブレーカー」が嫌いなのではないだろうか。
「non-no」「AneCan」「FUDGE」「spring」「PS」「haco.」「InRed」など多くのファッション誌があるけれど、「ウインドブレーカー」を特集しているのを見たことがない。「ウインドブレーカー」は男女着れる衣類だから人気があるならば特集をしていてもおかしくない。それなのに多くのファッション誌はやたらナチュラルな素材を推している気がする。それらはビニールっぽい素材の「ウインドブレーカー」とは真逆に位置する。

そこで気がついた。
「ウインドブレーカー」はダサいのか…、と。彼女は「ウインドブレーカー」を着て来た男を最悪と言った。しかしそれは彼女が少数派というわけではなく、多くの女性がそうなのだと気がついた。僕は「ウインドブレーカー」をカッコいいと思っているけれど、日常的に「ウインドブレーカー」を着てはダメなのだ。それはダサいのだ。

男性のファッション誌だってそうだ。
「ウインドブレーカー」特集はあまりやっていないと思う。「シティー派『ウインドブレーカー』はこれだ」みたない見出しを見たことがない。着るにしたって山に行く時や自転車に乗る時だけ。日常的に着てはダメなのだ。「ウインドブレーカー」がもてはやされる場所へと旅に出たくなった。

そして、「たぬきおにぎり」はそんな気分にピッタリのおにぎりだった。
ダシのきいた揚げ玉と刻みネギが海苔の裏に隠れ、味のついたご飯との相性は抜群でこれ以上ないほどに美味しい。旅に出かけた時ローカル電車の中で食べるおにぎりの味がした。素朴な味だけれど癖になる味。これを食べながら「ウインドブレーカー」の楽園を探す旅に出たいと思った。いつまでも変わらぬ味でいて欲しいと願ってやまない、おにぎりだった。 ( 2011/02/07 21:00:00 )




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