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ファミマ明太チーズと青じそごはん

ファミマ明太チーズと青じそごはん
明太チーズと青じそごはん ファミリーマート 128円(猫のいる生活をしてみたいです)

イメージを一致させることは難しい。
僕が何かを見て「ミコノス島みたいだね」と言ったとする。しかし、言われた相手が「ミコノス島」を知らなければ「はぁ?」となってしまう。知っていても「ミコノス島みたいだ」と思わないことだって十分にある。つまりイメージを一致させることは難しいことなのだ。しかし、一致するとなんだか嬉しかったりもする。

いつだったか知人が食事を作ってくれると言った。
自分以外の誰かが作った料理は外食以外では、もう何年も食べていなかったから、「なんか作るよ」と彼女が言った時はとても嬉しかったと思う。

何を作るか聞くと、肉じゃがと生姜焼きだと彼女は言う。
僕はこれと言った好き嫌いが無いので、その2つの料理に何か言うことはなかった。次に気になったのは、彼女の料理の腕だ。それとなく聞いてみると「ほとんどしない」ことが分かった。

急に気が重くなった。
不味くてもきっと「不味い」とは言えないだろう。あるいは料理中に包丁で指を切ったりしないだろうか、などと考え出すときりが無かった。何も考えないで置こう、と料理をしているところを見ないようにして、テーブルに料理が並ぶのを待った。

しばらくしてテーブルに料理が並んだ。
「地獄ってこんな感じかな?」と言った色彩の料理だった。メニューの関係でそれは仕方がないことだった。クリスマスの電飾のように鮮やかな生姜焼きなんて見たこと無いから。

だから言わなければいいのに、「地獄ってこんな感じかな?」と口に出してしまった。
彼女は少し不機嫌になった。見て取れるほどの不機嫌だから、僕が思うほど「少し」ではなかったかもしれない。しかし、彼女はじっくりと料理を見て「確かにそんな感じはするけれど」と言った。

誰も見たことがないはずの地獄のイメージが彼女と一緒だったのだ。
それは素晴らしいことだ。価値観の一致だ。もしもこれが夫婦ならば末永く一緒にいることだろう。

しかし、その一致の先に幸せは無く彼女は不機嫌であり続けた。
僕はいただきます、と言って各料理に箸をのばした。驚くほどに美味しかった。見た目に騙されてはダメなのだと悟った。残すことなく「地獄ってこんな感じかな?」という料理を食べた。本当に美味しく、地獄も捨てたもんじゃないと思った。その旨、彼女に伝えたが少し手遅れだった。

そして「明太チーズと青じそごはん」も本当に美味しくいただいた。
一見、それらの組み合わせは本当におにぎりとして美味しいのだろうかと思うけれど、食べてみると驚くほどに美味しい。口に入れた瞬間に青じぞの風味が広がり、噛むと中からこれぞチーズという濃厚な味がする。明太とチーズ、青じそと御飯のコンビネイションがこんなにも素晴らしいハーモニーを奏でるとは思わなかった。いつまでも変わらぬ味でいて欲しいと願ってやまない、おにぎりだった。 ( 2010/12/07 21:00:00 )




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