ビールが飲みたいとき、どうすれば良いか、
それが家なら、冷蔵庫を開けるかコンビニに買いに行くか、である。 居酒屋にいる場合は、店員さんを呼び止めて、ビールを運んでもらえるよう頼むというのが一番手っ取り早い方法である。 手っ取り早いというか、ふつうに考えるとそれ以外の選択肢はない。
問題は、いかにして店員さんを呼び止めるか、ということである。 店員さんが近くを通りかかった際に、「すいませーん」と声を出し、軽く右手をあげるというのがスマートな方法だろう。
だがしかし、この「すいませーん」が店員さんに届かないことが往々にしてある。
声が届かないのは悲しい。 僕が声帯を振動させ、空気を介して相手の鼓膜を振動させる。 ただそれだけのことなのにそれががかなわないとなると、とても切ない。
僕の発した「すいませーん」の声は居酒屋のにぎやかさにかき消され、掲げた右手は行き場を失いテーブルの上の空のジョッキに戻される。
しかも、店員さんに届かなかった「すいませーん」は、どういうわけだろう、周囲のお客さんには届いてしまい、僕は「あの人、ビールが飲みたいのに頼めないんだわ」という嘲笑の視線をあびてしまう。
ひょっとすると、嘲笑の視線は被害妄想かもしれないが、そう感じてしまうほど「すいませーん」が届かぬ思いとなってしまうのは、プチ不幸である。
( 2007/01/14 21:50:00 )
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