割るなよ、割るなよ、といわれていたものを割る。プレパラートである。
あのやってしまった感覚は相当なものだった。ヘタをこいたものは一段下がるスクールカーストの厳しさ。それが薄ガラス一枚であってもだ。
そんなプレパラートを割ってみようと思う。
何も背負わずプレパラートを買いまくれる今、鼻歌でも歌いながら薪割りのように割ってみようと思う。
プレパラートは厚いスライドガラスと薄いカバーガラスで構成されている
一枚5円だった
そもそもプレパラートとはなんだったか。顕微鏡を見るときに、対象を挟み込むガラス板がプレパラートだ。
プレパラートは厚いスライドガラスと薄いカバーガラスでできていて割れるのは薄いカバーガラスのほうだ。
カバーガラスは100枚入って525円。
あの「割るなよ」はたった5円の話だったのである。あのときの僕らは一体何におびえていたのだろうか。
割れるのはこのカバーガラス。525円でなんと100枚入りである。あのやってしまった感はたった5円の話だったのか。
プレパラートを割るために顕微鏡を買った。自分でやったことだが激しい矛盾を感じる。
プレパラートを割るために顕微鏡を買う
プレパラートを割るには当然顕微鏡もいるわけでネットオークションで買った。
でかい。そして、あ、あーっ!
届いた瞬間その大きさや立派さを目の前にして、雷に打たれたように激しい矛盾に気づいた。
今日はうまくいこうがいかまいが"試合に勝って、勝負に負ける"結果になるだろう。
なにも見ないのもあれだからきなこでも見てみようか
理科の先生にきいてみよう
同じくこのサイトで書いている加藤まさゆきさんが理科の先生なのでプレパラートを割るかどうかきいてみた。
加藤「割れるのはカバーガラスですよね? 顕微鏡の対物レンズはバネになってるんでスライドガラスまで割れることはまず無いですね。
ミスして割ることはないです。一番割るのは水道で染色液流してるとき流しに落とすときですかねー。
千枚くらい在庫あるんで、割っても、あーはいはいって感じですねー」
あ〜、はいはい、なのか。割るなよという注意はなんだったのか。
制服着て顕微鏡のぞくとほんとに何かが蘇ってくる
通常どおりに使用してみよう
まずは割らずに普通に顕微鏡を使ってみよう。
あれ? ピントが合わないな? と思ってレンズを下げていくと……
あっ、割れた!!
あの日の失敗ふたたび
見えないなと思ってレンズをさげていくと、あっと思った瞬間にはカバーガラスが、プレパラートが割れた。
あれから20年あまりが経ってふたたび同じ過ちを繰り返すとさすがにメンタルにくる。一体成長とは、学習とはなんであるのか。
割れ方。あの卑弥呼もプレパラートの割れ方で吉凶を占ったというが……
さあ、おかわりいってみましょう
ここからが本番だ
あれから20余年が経ってちがうのはここからだ。ここからもう一枚割る。
今のは当時と同じ"うっかり割り"であるが、今度は自ら進んで割る未知の領域である。はたしてプレパラート割りとはどんな感覚なのか。
割るぞ、割るぞ、割るぞ
うわ〜、やっちまっただ〜!!
わかっていてもヤバイ
なんと。身構えてはいるものの、割れた瞬間は(……やっちまっただ〜!!)であった。
これはもう「プレパラート割るなプレパラート割るな」催眠を逆行催眠でといてもらうほかないんじゃないか。それほどまでに「プレパラート=割ってはいけない」ものとして刷り込まれているのである。
しかしあのときの体験がよみがえってきたおもしろさは確実にあった。これいまだにこんなに焦るのか。
この背徳感こそ大人の、そして小さな変態の力だ!!
この先はどうなっているのか? 割りまくろう
じゃあこの先はどうなっているのだろう。
もうレンズものぞかず、プレパラートには何も挟まず、ただただ効率的に割るのみ。
割って割って割りまくる機械となり、プレパラートにただ刑を執行する悲しい機械、その気持ちは一体どういうものなのだろう。
あれ? 割れない?
急に割れなくなった。これはこれで不満が
割れなくなった
何も挟まないと急に割れなくなった。割れたところで(やべえ!)とか思ってたのに、これはこれで不満がつのる。ああ、人は勝手が服着て歩いているようなものだなあ。
あまりにも割れないからレンズの縁にドライバーを挟み込んでみた。割れた。
こういう風にドライバーを挟んだら割れた
……だけどこれ一体なんなのかな?