たくさんの和子と一夜
家に帰ったら大きなケースにザリガニ50匹を移した。クーラーボックスと違い、少し広々としているので、ザリガニも嬉しそうだった。1時間おきにケースをのぞくと、だんだんとかわいく感じてくるから不思議だ。友達から恋人に関係性が変わった。
あんまりにもかわいいので、女性を撮ると綺麗に写るレンズ(後ろがボケる)でザリガニを撮影した。深夜1時くらいの出来事だ。「かわいいね」とか「こっち向いて」と話しかけながらの撮影。自然に和子という名前で呼んでいた。よっぽどかわいかったのだろう。ちなみに見分けがつかないので、全部和子である。
そんな深夜の思い出をザリガニと作り、直樹君の夢を叶える当日を迎えた。またザリガニ(和子)をクーラーボックスに移し、夢を叶える場所である公園へと向かう。朝5時の出来事だ。ザリガニも寝ていたようで、茹でられたエビのように動かず、真横になってプカプカと浮かんでいた。死んだか! とかなり焦ったが触ったら起きた。
ライフネット生命の担当者もその数に笑っていた。そりゃ、笑う数だ。我が家ではザリガニをベランダに置いていたが、ガラス1枚を挟んで、僕が寝ていた。「ガザガザうるさくなかったですか?」と聞かれたが、実際はネチャネチャとうるさかった。
池を作り出す!
せっかくなので、もっと数を増やそうとライフネット生命の担当者とザリガニを釣った。50匹より60匹の方が直樹君も嬉しいはずだ。ということで、スーツを着た大人が朝からザリガニ釣りである。親には見せたくないような気がするけれど、これも子供の夢を叶えるためなのだ。
近くにいた方にザリガニって捕れますか?と聞いたけれど、この時期はもう無理、と言っていた。小学1年生用の算数ドリルを大人が解くような分かりやすい答えだった。今の50匹で子供を喜ばせるしかない。
ザリガニの数を増やすのはあきらめて、特設池を作る。この池にザリガニを放ち直樹君にザリガニを捕ってもらうのだ。木枠に透明なシートをはり、そこの水を入れザリガニを放ち、草を浮かべれば完成だ。
時間は戻ります!
というこで、冒頭に戻る。この日の直樹君は元気いっぱいで、前日はお母さんと一緒にザリガニの本を読み、朝6時には起きて着替え、ずっと玄関で待っていたという。お母さんも楽しみで寝られず、前日は少しお酒を飲んでから寝たそうだ。これでザリガニがいなかったらまずいだろう。50匹を集めることができて本当によかったと思う。
いきなり特設池には行かずに普通にザリガニを釣る。矢を遠くに飛ばそうと思うと、まずは矢が飛ぶ方向とは逆に弓を引く。その原理と同じで「釣れないね…」の後に特設池に行った方が喜びがあると思ったのだ。じらしである。
50匹持って帰る、と直樹君。2匹ね、とお母さん。お母さんはザリガニを触ることもできないそうだ。なのに50匹は地獄だ。男の子を持つと大変なんだな、と思うが、そんな心配はよそに、すでに50匹準備してある。いよいよご対面である。