様々な季節のいたずら

日本には季節というものがある。移ろい行く季節は我々に様々な変化をもたらす。また繰り返す季節はいろいろなことを思い出させてもくれる。5年前の冬にこの道を彼女と歩いたっけ、など。今はもう手の届かない存在。それが季節のいたずらだ。

ライフネット生命とデイリーポータルZで子供の夢を募集した。そこに届いた夢を叶える企画だ。

第一弾では「大人っぽい一日を過ごしたい」という8歳の女の子の夢を叶えた。第二回目の今回は5歳の男の子の夢「ザリガニを捕りたい」を叶える。最近は寒くなって捕れないそうだ。5歳児が直面した季節のいたずらである。

直樹君の趣味は「ザリガニ捕り」だそうだ。家でもザリガニを飼っている。暖かい頃はよくお母さんや友達とザリガニを捕りに出かけていたそうだけれど、最近は全然捕れない。だからたくさん捕りたいのだそうだ。元気いっぱいの素晴らしい夢だと思う。

50匹は捕まえたい、いや2匹で！

ここでいうザリガニとはアメリカザリガニのことである。季節にもよるが、暖かい頃は小川や池、田んぼなど水があれば、都会でコンビニを見つける感覚で簡単に捕ることができる。1日で30匹を捕まえることだって、朝飯前の時だってある。

ただし季節が変われば話も変わる。ザリガニは冬場は冬眠してしまうので、その季節に捕まえようと思うと、2時間に一本しか電車が来ないような田舎町でアルゼンチン料理のお店を探すような難しさなのだ。つまり、いないのだ。だからこそ、直樹君の夢なのである。

直樹君の夢を叶えるべく50匹のザリガニを準備した。特設の池を作りそこにザリガニを放ち、直樹君に捕ってもらうのだ。ザリガニを捕る前に直樹君に何匹捕りたい？　と聞いたら「50匹！」と言っていた。一方、直樹君のお母さんは「2匹！」と言っていた。お母さんはザリガニが苦手だそうだ。

笑顔のその裏では！

直樹君は100m走のランナーのように全力でザリガニ捕りを楽しんでくれていた。笑顔。見ているコチラも笑顔になる。やはり子供の笑顔は素晴らしいのだ。ただしこの笑顔までには、猿も豚もカッパも連れずに、ひとりで天竺を目指すような長い道のりがあった。

直樹君には特設の池でザリガニを捕ってもらった。季節的に普通の池ではザリガニが捕れないからだ。では、なぜ特設の池にはザリガニが50匹もいたのか？　それは僕ら大人が必死で探したからだ。

まずはそれぞれ探しましょう、ということで、編集部安藤さんと僕で手分けしてザリガニを探した。安藤さんは夏にたくさんのザリガニを見た平塚の田んぼに赴いた。しかし、そこにあったのはザリガニではなく、ザリガニだったものだった。田んぼのザリガニは稲刈りの時にいなくなるのだそうだ。

僕も数年前にザリガニを捕っていた場所に行ってはみたがいなかった。やはりこの季節にザリガニは厳しいようだ。とは言っても、僕もザリガニが好きで、それが高じて、去年の夏はニホンザリガニを探しに北海道に出かけたりもした。だからこそ、直樹君の夢は理解でき、叶えてあげたいと思う。でも全然いない。田舎町でアルゼンチン料理のお店を探した方が、まだ見つかる気がする。