子供の夢にはいろいろなものがあると思う。ある子供は正義ヒーローになりたいかもしれないし、またある子供は好きな食べ物をお腹いっぱい食べたいかもしれない。
そんな子供の夢を募集したら「大人っぽい一日を過ごしたい」というお願いが届いた。社会人としてオフィスで働いてみたいそうだ。未来への期待にあふれた素晴らしい夢ではないか。ぜひその夢を叶えるお手伝いをしたいと思う。
子供の夢と現実
ライフネット生命とデイリーポータルZで子供の夢を叶えます、という募集をした。その結果「大人っぽい一日を過ごしたい」という夢を叶えることになった。
8歳の女の子からのお願いだ。なんて希望に満ちあふれたお願いなのだろう。働きたい、素晴らしい夢ではないか。
という話を編集部の安藤さんから電話で聞いた。「ということで、地主さん、叶えてあげてください」と安藤さんは続ける。僕としてもぜひ叶えたいと思う。僕も子供の頃は大人の世界に憧れたものだった。
しかし、安藤さんがその話を僕にするということは、大人である僕の一日を体験したいということなのかと勝手に思い込んでしまった。ある意味大人のリアルな世界を知りたいのかと。
僕は会社で働いておらず、フリーの部分だけが際立つフリーライターをしている。基本的に家にいて、パソコンを無駄に眺める一日だ。そんなことを体験したい子供がいるなんて! と感動していたら、そうでなくて会社員としてオフィスで一日を過ごしたいそうだ。確かにそうだ。僕が子供の頃に描いた大人はフリーの部分がこんなに目立っていなかった。
オフィスで過ごす一日
話を聞けば、ライフネット生命のオフィスで大人っぽい一日を過ごすそうだ。そのお手伝いをとのことだった。ぜひその大人体験ならお手伝いしたい。そこで何をしたらいいかを安藤さんと話し合った。僕らが描く女性社員。安藤さんも男で僕も男。男二人の女性社員とは? というブレスト。意外にも盛り上がった。
女性社員はカーディガンを着て、長財布を持っている。ハンドクリームが鞄に入っている。ヘアクリップで髪をとめていて会議終わりにそれを外してファッサ〜ってする、などアイデアだけは、ダムの放流みたいに出た。これは満足してもらえるのではないだろうか。
しかし、男だけの女性社員とは? なので、電話を受けて伝言を口紅で鏡にサヨナラと書く、満月に向かって財布を振る(女子力アップのため)など、今となっては、全く意味が分からない方向へ行ってしまった。そして、何が怖いかというと、その状態で子供の夢をかなえる当日を迎えたことだ。男が描く女性社員は妄想だらけなのだ。
子供を迎える
もちろん当日までにいろいろな修正はあった。ただし先に挙げたものは全て採用である。追加でスイーツの開発やプレゼンテーションなどを体験してもらうことになった。社員証や名刺も作った。綺麗にまとまったと思う。とはいえ、子供はこれで喜んでくれるのだろうか、とみな緊張している。大人になってしまった今では、自分の子供の頃が上手く思い出せず自信が持てないのだ。
彩里ちゃんは8歳で現在小学3年生。僕の思い込みでは、8歳はもっと幼い気がしたのだけれど、すごく大人だった。あとで聞いた話では、ファッションも大人を意識してきたそうだ。正解のファッション。大人びて見える。自分が8歳の頃を思い出すと、この時期は半袖に手袋をつけていた。寒いのか暑いのか。なんだそのファッションは、と思う。同じ8歳でこうも違うかと驚く。
女性社員ということで、ライフネット生命の女性社員さんにお化粧をしてもらう。普段はもちろんお化粧などはしないのだそうだ。ますます女性社員に近づく。若干緊張しているようだけれど、それはこちらも同じだ。名刺や社員証も準備して、大人への準備はほぼ整いつつある。