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コラボ企画:子どもの夢をかなえたい!
 
深海魚を食べてもらいたい

思いっきり期待を裏切る


釣れたかも!

釣り始めて数時間。日も少し落ち始めてそろそろ撤収かという空気が漂い始めたその時である。
僕が握る竿の先がこの日初めて水中に突き刺さった!

再び活気を取り戻す船上。

遠くで見ていた船長でさえ竿先の異変に気付いたほどはっきりとした反応だ。魚がエサを食ったのは確かだ。
あとは一心不乱にリールを巻くのみ!

しかしこの時間がまた長い。水深500メートルから糸を巻き上げるのだから当然なのだが、ひどくじれったい。


仕掛けが見えてきた!

ようやく深海から仕掛けが帰ってきた!さあ、深海魚は釣れているか!?

はい、ダメー!!

釣れてませんでしたー!!
絶望。
なんだよ!絶対釣れたと思ったのに!
さっきのみんなの笑顔返してくれよ!!
みんなの期待を裏切って、もう顔向けもできないよ!!

打ちひしがれる。

まあ釣れなかった魚に八つ当たりしてもしょうがない。
そこは運と腕が足りなかっただけだ。
自然が相手なのだからどうしても上手くいかないこともある。

ちなみに魚そのものは釣れなかったが、仕掛けにはやはり白い粘液がまとわりついていた。 この粘液の主が知りたい…。

 

時間切れ…。しかし最後の最後にドラマが!!

ほどなくして、船長から撤収のコールが掛かる。
厳しい状況の中にあって、なんとか僕らに釣ってもらおうと船長も予定以上に粘ってくれたのだが、それに応えることはできなかった。
各自、無念に思いながらも仕掛けを回収する。

が、ここでまさかの展開が!


魚釣れてたー!!

「あ!魚ついてる!!」
耳を疑うような声を小塚さんが上げたのだ。

急いで駆け寄るとそこには確かに見慣れぬ不気味な魚の姿が!


深海性のアナゴの一種。おそらくイラコアナゴという種ではないかとのこと。

船上は歓喜の声に包まれる。
しかし最後の最後にこんなにドラマチックに決めてくるとは、なんともスター性のある人だ。

口がこんなに大きく開く。

この魚、口まわりの骨格が驚くほど柔軟。アナゴの仲間にしては顎の力も弱い。 深海底では大口を開けて見つけた餌を手当たり次第に丸飲みにしているのかもしれない。 ちなみに仕掛けにはあの粘液がこびりついていた。正体はこいつだったのだ。

依頼人のお二人にも笑顔が戻った!

夢がかなわなかったとしょんぼりしていたお二人も奇跡の逆転劇に大喜びだ!本当によかった!!

はしゃぐ一同と複雑な表情の僕。

この一尾が釣れて一番喜んでいたのは、釣り上げた張本人である小塚さんでも夢の実現が目前に迫った依頼人でもなく、実は僕だったのかもしれない。あわや取材失敗という窮地を救われたのだから。
しかし表情はいまひとつ冴えない。
やはり、せっかくだから僕も自分の手で何か釣り上げたかったという悔しさも感じていたのだ。 そして何より「この取材、僕の存在必要無かったんじゃ…。」という致命的な事実に気付いてしまったからである。
朝からずっとプレッシャーを感じ続けたせいでもう思考が完全にネガティブモードになってしまっていたようだ。


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