分水嶺とは水系と水系の境界線、つまりその場所に降った雨がどの川に流れてどの海に注ぐのか、というエリアの境目である。
たとえば日本列島の中心部分には太平洋と日本海の分水嶺が縦断していて、同じ山でも雨や雪が降った場所によって、流れ着く先が太平洋か日本海かに変わるのだ。
そこまで大げさでなくても、川が2本流れていればその間のどこかに分水嶺があるはずだ。それがたとえ山の中じゃなくて住宅街であっても。
(萩原 雅紀)
東京の水系事情
東京には大きく分けて荒川と多摩川という2つの大きな川が流れていて、それぞれが東京湾に注いでいる。都心部だとさらに渋谷川とか目黒川とかの水系もあるけど、東京の大部分はほとんど荒川水系か多摩川水系と言っていい。
分水嶺というと何となく高い山の尖った頂を想像してしまうけど、東京の平野部にも微妙な土地の起伏があって、降った雨が近くの排水溝から小さな川に流れ込み、最終的にそれが荒川か多摩川かに流れて行くわけだ。
市街地にも分水嶺がある
あるとき地図を見ていて気がついた。荒川の支流と多摩川の支流が、すごく近くを流れている場所があるのだ。場所は東京の西部、武蔵村山市。
ここを流れる空堀川は下流で柳瀬川という川に合流して、柳瀬川は荒川に流れ込んでいる。いっぽう、すぐ近くの残堀川は南下して多摩川に合流している。両者の距離、いちばん狭いところで1km程度。地図で見る限りその間に山や尾根のような地形は見当たらない。
一見するとふつうの市街地なのに、そのどこかに荒川水系と多摩川水系を分ける線があるのだ。同じ雲が降らせた雨でも、落ちた場所が数メートル違うだけで別々のルートで流れ、東京湾までしばしお別れ。それを知って俄然見に行きたくなり、さっそく現地に向かった。