以前、当サイトで「ビルに挟まれたちっこい建物鑑賞」という記事を書いた。高いビルとビルの間にちんまりとたたずむ、小さな建物を見るという記事だ。周囲との落差の大きさに、見ていると様々な気持ちが掻き立てられる。
記事を書いてからも、街を移動しているときはいつも同じような建物が気になっていた。そうそうあるわけでもないので、見つけるとちょっとうれしい気持ちになるのだ。
あの記事から4年弱、見つけるとその場所を記録してきたメモがそこそこたまってきた。それらを改めて訪れてみよう。
(小野法師丸)
そこだけ時間の流れが違う空間
意識していないとなかなか目に入らないのだが、気がつくと妙に気になり出すビル間の小物件。見てるはずなのに見えてないという、街の ちょっとした異空間とも言える。
以前の記事は「ビルに挟まれたちっこい建物鑑賞」というもので、あくまで遠くから眺めて見たわけだが、今回は 記事タイトルの最後の部分を「お店探訪」としてみた。
こうした建物の多くは、現在でも営業している店が多いのだ。そのため、今回は見ているだけではなく、一歩踏み込んでどんな様子なのかも 味わってみることにしたい。まず訪れたのは渋谷の街。
渋谷と言うとおしゃれな若者の街というイメージが個人的には先行するのだが、道すがらにはおしゃれさとは違う軸で気になる店もあった。蒸し鶏や油そばとも書いてあるのに、「餃子しか信じない…」とある。蒸し鶏や油そばの立場がない。
この店はあいにく休業日で寄り道で入ることもできなかったが、同じ通りに今回の目的とする店があった。
結構な落差。手前が工事中で、建物全体が見えないのが惜しい。
この手の物件には地味にひっそりとあるものも多いが、こちらは全体的に赤く装飾されていて、小さいながらもアピールがある。どうやら鞄のお店らしい。道路を渡って、近寄ってみよう。
たくさんの商品が並べられた店頭。商品をよく見ると、高級品ばかりを扱っているわけではなく、手頃なものも多いようだ。大きめのドラム型バッグも1700円。これ、イトーヨーカドーとかより安いんじゃないだろうか。
道に面したガラスケースに並んでいたのは財布などの小物たち。やわらかい牛皮の小さな財布、子供の頃に父からもらった財布がこんなやつだった。おむすび形のコインケースも愛らしさとともに懐かしさが漂う。
渋谷駅に程近い大通りの店先がこんな感じとは意外。建物のたたずまいとぴったりマッチするような様子だった。
さて、この通りをもう少し進んだところに、やはり今回のターゲットとしている条件に合う建物があった。
グレー系の色合いのビルに囲まれて、なかなか気づきにくい物件。改めて意識しなければ、周囲に溶け込んでいるようにも見える。こちらのお店はどうやら飲食店。ちょうど昼時なので、今日の昼食はここにすることにしよう。
「はし田屋」という名のこのお店。いわゆるウナギの寝床のような店内は、子供の頃、穴ぐらに入ってワクワクしたような気持ちになる。地鶏料理の店のようだが、ランチタイムでのおすすめメニューは親子丼のようだ。
メニューで隣に並んでいた「そぼろ丼」というのも気になる。個人的にはわざわざ選んで食べないメニュー。高校の時に母親が作ってくれた弁当以来だろうか。両方食べてみよう。
両方ともに、出てきて最初の印象は「きれいだなー」というもの。食欲をそそるビジュアルがうれしい。
親子丼は見た目通りのぷりぷり感。肉は柔らかくて、うま味が濃い。そぼろ丼、手前に見えるのは鶏肉ではなくて卵そぼろ。これがとても細かくて、食感が通常のものより上品だった。
入ってしまうと建物の落差は当然感じられないのだが、店を出て上を見ると改めてわかる周囲との差。テトリスの4連ブロック待ちを下から見るとこんな感じなのだろうか。