−−「すみません、この辺の県境を見に来たんですけども、このあたりってけっこう県境が入り組んでますけど、どうしてですか?」
−−「あぁ、この辺はねー二本木って言うんだけど、もともと埼玉県入間郡元狭山村二本木でひとつの村だったの」
−−「埼玉県だったんですか?」
−−「そう、埼玉県だったんだけど、昭和33年に市町村合併が行われたとき、東京都に入るか、埼玉県に残るかで村が真っ二つに割れて、結局二本木の一部が東京都に編入されたのよ」
そうか!さっき、商店のご主人が「越境合併」と言っていたのはこの事だったのか。確かに地図で確認すると「二本木」という地名は入間市にも瑞穂町にもある。
−−「当時は(東京都編入に)反対派、賛成派に別れてもう大変でしたよ、青年団の人が警察に捕まったりして、私はこんなちいさい娘だったけど、ラジオで毎日報道されて大騒ぎでしたよ」
……なんだか横溝正史の小説だと、殺人事件のひとつでも起こりそうだけれども、現実に起った話だ。情報源が「ラジオ」というのもリアルに昭和ですごい。
−−「年配の人だと未だにしこりがある人もいるかもしれないけど、でも、今はほとんどの人はそういうのは関係なく普通にくらしてますよ」
はからずも、旧元狭山村の分村合併騒動について聞き取り調査をしてしまった。フィールドワークってこういう感じなんだろうか?
いりくんだ県境は越境合併が原因だった
後日、国会図書館で昭和時代の地図を調べたところ、確かに昭和33年より前の県境はもっと箱根ヶ崎駅に近い場所にあったらしい。 |